冬の太陽は夏に負けず陽気なのだと初めて知った。
コットンパックをした後のパフを空に向かって吹き飛ばしたら、
ちょうど今日のような薄い浮雲になるのかもしれない。
返事待ちで静かになった間を埋めようと、蒸気したホッペをさすりながら、
グロスが落ちて本来の柔らかみしかない唇を結衣が動かそうとしたら、
「うん?」と一言、
三人娘の机の近くに突っ立っていた近藤が、少し腰を曲げて座っている彼女の顔を覗き込んだりなんかするから反則だ。
気を遣われた感が非常に恥ずかしいったらない。
そんな行動をとるのは小悪魔ガールにしか許されていないというのに、
大好きな近藤の目が、赤く潤んだ目が、射抜くのは卑怯だ。
確信犯でない方が大罪だ。
無意識の振る舞いの方が罪深い。
「ううん! あはは、は、ビッチ三人娘なんだよ」
緊張とときめきに狂った身体は、彼の呼吸一つさえ感じとってしまいそう。
「じゃあね」
会話終了の頃合いを見計らうのは、いつだって市井だ。
ばいばいと手を振り、E組を去る姿を見送る。
お弁当箱を片付けて次の授業の準備が整ってしばらくすると、ベストタイミングで予鈴が鳴るはずだ。
……。
背中はいつも真っ直ぐで、ブレザーからはみ出たセーターのバランスが綺麗、襟足の髪がふにゃりと垂れている――以上、結衣による観察だ。
右手をそろそろ下ろそうかと、小指が軽く曲がりかけた時に、
「女子さ、お弁当なんでちっこいの? 少食可愛いアピールだろ、古風すぎ!」
閉められるドアの隙間から零れたのは、好きな人の悪戯に笑った顔と甘く低い声で、
遮断されたのに余計キュンとなる心は、ある意味疲れてしまう。
「……ミー、いいかんじ?」
「脈あり? てか何あれ、あんたら二人こっちが恥ずかしいじゃん」
半笑いの友人は忘れていやしないだろうか。
「自惚れたら片思い大臣失脚する!」
偶然奇遇作戦のメンバーに限って、褒め囃すことは禁物、
客観的に冷静に、慎重に初心を忘れずにいたい。
どうかお日様、明るい未来をわけてくれますように。
予鈴が流れる校舎は幼くも微笑ましい柔らかさを隠していた。
…‥



