揺らぐ幻影




和気あいあい穏やかモードがE組の象徴で、

中でも盛り上がりを見せる三人娘はお弁当をシャッフルしていた。

不細工なクマのお弁当箱を突くのが結衣、結衣のを里緒菜、里緒菜のを愛美、

人の家は味付けが全く違うので、男子がお袋の味最強説を唱えたがるのをマザコンだと全否定するのはちょっと気の毒だ。


現に愛美の家のほうれん草のおひたしは、結衣の母親が作るものとは別物で、

慣れ親しんだ味を新しい夫婦が二人の味に築き上げていくなんて、

だから結婚は凄いなと、これまた彼女らしく短絡にまとめた。


「まー君」
「トカゲおばさん」
「うませてよーは?」

「射的やばくない?」
「あれ詐欺りすぎ」
「あはは、料金所のも!」

優雅に談笑しながら、お昼ご飯をしっかりと食べる。


  ……。

大塚とは相変わらず宿題を借りる関係で、

多少ぎこちないけれど、優しくすれば思わせぶりな小悪魔ちゃんになるし、異性として好かれる必要がないので、

なるべく里緒菜の話題を挙げればきっと大丈夫だ。
二年生になればなんとかなるはずだ。


「そいやぁバイト先に市井きてさ。そこはぽこりん連れてこいじゃなーい?」

「確かに! 奴は気が利きませんね」
「雑魚キャラにときめかないですもんね」

愛美と里緒菜のクオリティーの低い雑なお喋りが結衣にとっては極上だ。


机に置かれた携帯電話のキラキラストラップは加工効果?
それとも美しい心の投影?

ここはベタに後者で解釈するべきだろうが、近藤以外で深みを追求する趣味がない少女には、

眩しいのは熱血の笑顔に似ているし、親友二人の優しさにもそっくりだけれど、ただのキラキラなだけにしておいた。


「ミー、ミー!」

やかましいそれは学校には馴染まない音で、

「あー、服コの癖に不法侵入」と里緒菜が、「ミー?」と愛美が、それぞれ声の主に反応を示す。


軽く薄情すれば、やっぱり彼が居ると世界は輝き出すのだと実感してしまうレベルの、

「ミーはミーだよ、ね?」

朗らかな笑みの王子様と、


「おはよ。  田上さん」

その側近が出現した。

胸がドキドキするのに比例して瞳に映る全てが魔法にかかってしまう。