揺らぐ幻影


仲良し組を結成して約一年、

文化祭の展示会完成間近における愛美による作品崩壊や、体育祭の二人三脚における結衣による紐が外れるお約束、

文化鑑賞会における里緒菜による居眠りをして椅子から落ちた持ちネタなど、

ドタバタコメディー要素はあったが、

すれ違いや亀裂、青春っぽい類いには出会わなかった。


結衣の片思い。
三人の溝になるにはせいぜいこれが妥当な項目だろう。


愚か者が初恋フィーバーで愛美に気を遣わせたり、里緒菜にビターな恋を送らせたりしていた。

原因は田上結衣のテヘッでしかない。

わくわく片思い結衣ピョンが、協力してくれる二人に甘え大好きなぽこりんにポップに夢中だったせい、

つまり、配慮することを怠ったせいだ。


しかし、腹立たしい欠点を愛美と里緒菜は彼女に注意しただろうか。

していない。
二人は笑っていた。

女子が揉めがちな事柄に遭遇した際にも、性格上優れているからわざわざ溝にしなかっただけだと、

結衣には言葉にされない親友の想いが確かに伝っていた。


受け取っているから、今ここに居る彼女は笑っている。

熱血によると『らしくない』らしいが、これが結衣のらしさなのだ。


――――と、スリッパに★MAYURI★と落書きをしている三人組の内情を聞かれてもいないのに語ろうが、

結局本音でぶつかり合わないなんて、さびしい奴らだと呆れられそうなので、

見えない絆をここに評しておこう。

結衣は結衣で愛美は愛美、里緒菜は里緒菜、だから仲良し。それだけだ。

単純に面白い人であるがために、友人を笑わせることが生きがいなだけで、

そこに遠回しな友情があるとかないとか、実は夜中に感動して泣いたことがあるとかないとか、

曖昧に濁そうとも、聡明な人には既に詳細は悟られているであろう。


あえて熱さを流すことが底辺な彼女たちによる大人スキルで、多分そこそこ綺麗だ。


個性が叫ばれる昨今、皆の価値観など十人十色、

恐らく共感は得られず悪名高いトリオと称されるのだろうが、

三流主義者はそんなことさえスルーし笑う。


意識して背筋を伸ばせば何が見える?

結衣にはいつも通りにメイクをしている二人にしか見えなかった。