揺らぐ幻影


「自慢、これ六千円」

女子高生の手の平にあるのは、

事実が本当ならマーケティング班は需要と供給バランスの見込みミスで一大事の品、

巷で評判の生産が間に合わず一時発売中止中のグロスとも違う唇ケア美容液だ。

今やお店に売っておらず、オークションでは定価以上で取引されているんだとか。

完売煽り商法が企業では流行りなのかと疑いたくなる結衣は、やはり捻くれている。


「私ってば先見気質」

わざと威張るのが小崎里緒菜で、

「うわ、天ぷら食べた?」

誇張してリアクションするのが山瀬愛美、

「DXキョウコさん!」

そして大袈裟に突っ込むのが田上結衣だ。


シリアスなんてとっくに終了。
この三人に限っては笑顔が普通だ。

過ぎたことをねちねち執着しないし、だからといってポジティブとばかりに反省せず現実逃避をしない。


ウサギのお財布をぶら下げている少女たちは後悔せずに猛省するが、

ある程度ネガティブ入ったら次はプラスになるべく傾向と対策を練り努力をするだけの人間なのに、

そんなお手本のような向上心の高さはらしくないと、表面状は茶化してごまかすシャイな連中で、

面倒臭いことに固執し昨日昨日と過去を呪うよりも、明るい明日へスキップする子こそ★MAYURI★だ。


本当は女子高生らしく親友とすれ違ってみたり、腹を割って本音をぶつけてみたり、

しんみり浸ってみたり励まし合ってみたりして、友情を育むのもアリなのだけれど、

そんな感動エピソードなんて早送りで飛ばしちゃうのが、

お揃いのストラップを携帯電話にぶら下げる少女ら三人だ。

日常を生きる彼女たちは演技派女優でない故、ドラマチックに名台詞をお茶の間に届ける義務はない。


クラスメートの中には、仲間内の揉め事からの亀裂〜再建におけるハンカチ必須な出来事もあるが、

結衣たちはあくまで三流の集いなので、同級生たちの波瀾万丈・後世に伝えたい名場面集は倣えない性分である。

よって、愛美・結衣・里緒菜の三人衆は仲直りなんてないし、そもそも仲間割れなんかしていないし、

ただ楽しいから一緒に居るだけのくだらない御一行様。

鏡の中に並ぶ女子高生は右を向けば左、左を向けば右、その痛さが素敵じゃないか。