揺らぐ幻影


風力が微妙な携帯ドライヤー、皆一つは持っているダッカールピン、四角い形が可愛い整髪剤、

前髪一つでセンスが試されるらしい女子の世界、

厚めのパッツンにしろブローで膨らみを出すかストレートアイロンで直毛にするかで悩み、

斜めに分ける際には平仮名のしを並べたみたいにカーラーで動きを出すのか、サイドとどう馴染ませるのか考え、

仲間周りで助言しあい、ビューティー知識人になろうとするのが女子高生の青春で、

大人に呆れられるくらいが楽しい。


高校生なら、舞台で最高の見せ場の演技をするかのように深い話をお披露目してくれる子が数居るのも普通だ。

あくまで中学高校の四年間を思い出した結衣の教室に限ってのことなのだが、

クラスメートの女子が十七人居れば十人は語ることが好きな子だった。

憧れの奥も恋愛とは〜と熱弁する節があるし、前の席の子は仲間とは〜と雄弁する気が多い。

二人を尊敬するも、愚かな結衣は楽しいことしか考えない性格だから真似る気はなかった。


ただ、波長が合うという単語を知ったのは、中学三年間を振り返ると彼女のグループには演説者が居なかったことに気付いた時で、

つまり、愛美と里緒菜を選んだ時だ。


さて、
そんな結衣の人生にマストアイテムとなるオシャレ台詞は何になるのだろうか。


鏡の中の少女は虚像?実像?
理科が嫌いな彼女は間違えるに決まっている。


里緒菜は言った。
「あんたに失恋した大塚落とすから」


愛美は言った。
「失恋したばっかって落としやすいらしいし?、さすが結衣、大塚振って里緒菜に協力するとかナイス友情」


結衣は言った。
「二人とも大っ嫌いなんですけど?」

まるでピアノの綺麗な音。
バイオリンの高音も良いし、ストリングス全快なら尚良い。

癒しのメロディーは笑声だ。
笑いの質は粗くて構わない、今重要なのは元気付けようとする心意気なのだから滑ってナンボだ。


『着飾るのは外見?』
『いいえ、ハートです。』

こんな感じの応答ができるようになれば、熱血と本当の意味で仲良くなれるのだろうが、

美しい事を茶化す結衣は、まだまだ幼い。

それが田上結衣。多分、それでいい。
そうやって馬鹿をやることが宿命だ。