揺らぐ幻影


観察日記ばりに結衣という女の生態に迫ってきた本作であるが故、

既に承知の特徴なのだけれど、そこを少しシュールに解説しよう。


「んー? 朝から凄い、バレー楽し? 白熱メモリー」

沈黙を埋める術はまあまあ習ってきたので、結衣は無意識に知識を実践していた。

本当に熱血と個人的に話すのは初めてで、変に緊張する。


「うん、アタック決まった時気持ちいいんだ! 一年でレギュラーってウチだけだし」

「ふえー、レギュラーすごい、気絶する」

少々青春臭い発言が気になるも、溌剌とした素顔は単純に爽やかでいいなと思った。

きっと保護者の好感度が高いのは熱血のようにお化粧もしなくて髪も弄らず、

変に外見を小細工しない少女なのだろう。

こつこつと努力をして自分を高める人は、

こっちもつられて背筋が伸びるようなオーラを纏っている。

結衣に不足気味の本気さを持っているなと、やや萎縮してしまう。


そんな熱血は他校の野球部の――これまた大変熱血な彼氏が居ると聞いたことがあった。


  ……。

もう一年経つのに、あんまりクラスメートのことを詳しくは知らない。

小中高、今までを振り返ると、なんとなく結衣が積極的にアプローチをしていたのは、

愛美や里緒菜、奥を始めオシャレ意識の高い女子ばかりだった。

ファッション性に優れキラキラして、いかにも弾けてます!的な子たちとばかりつるんできた。


挨拶はするし必要がある時はそれなりに話すけれど、

ファッションに興味がなさそうな子たちには進んで関わってはこなかった。

例えば熱血。
せっかく綺麗な足をして、綺麗な澄んだ目をして、綺麗なスタイルをして、綺麗な髪をしているのに、

どうして着飾らないのかなとか、思ったりなんかしていたことがなかったと言ったら嘘になる。


それって、多分、凄く良くないこと、だ。

だって、見下していたということ。違う?……違わない。

また一つ、自分を嫌いになる。

友人になりたい子を選んでいる浅ましさが怖い。


愛美も里緒菜も、よく結衣なんかとオトモダチをやるなと感心してしまう。

一種のボランティアに近いのではないだろうか。