揺らぐ幻影


今、里緒菜を褒めると凄く偽善に満ちた嫌な女になる気がするのは勘違いなのだろうか。

あまりに白々しいような。

自分が好きな人にチョコを渡す女はウザイ。
自分が好きな人と談笑する女は目障り。
自分が好きな人を蔑ろにする女は不愉快。

単純な結衣ならそう思う。


『愛美も偉いけれど、里緒菜だって凄いよね、あんな子になりたいッ』

本当にそう思うが、つい先日まで愛美サマサマだった結衣はどうもきな臭い。

だから、三人の安い絆を知らない人にとっては一見利己的でしかないが、

結衣ができる親友らに対する誠意はぽこりんと両思いになることが得策なのではないだろうか。


優しい人に、いつか返したい。


  、しろ

正反対の自分がこっちを見ている。

どうして結衣の肌の色はこんなに透き通っているのだろうか。

心なんてちっとも純白ではないというのに。

  雪女


前より眉毛を増やしたせいか、スッピンでも違和感がなくなった。

素顔は幼い。
ありのままとは何なのか。

素で接すると文句なんて言いたい放題、ただの我慢が足りない人なだけ?

忍耐強過ぎると自我を抑えてばかり、ただの意志が弱い人なだけ?

難しいなと笑える。
たかが十五の小娘にさっぱり悟ることはできない。

分からなくていいのかなと諦める。模索することに意味があるのかなと妥協してみる。

ただ里緒菜が好き。
それが確かなだけマシじゃないか。

とりあえず悲観的ではないはずだ。


  ……白

結衣は自分の性格で良いところなんて考えたことがなかったが、無頓着は罪だから頑張ろうと誓う。


《再来週テストなのに貴様は余裕ですね笑。俺シフト削りまくった、迷惑とか関係ない笑》

《頑張り屋さんアピールですか笑? テスト前でも普通のシフトとか私勇ましくない?》

《てか田上さんウケる。一人メール読んで笑うから俺危ない人じゃん笑》

《不審者。全然、てか近藤くんギャグセン高いから》


縮まる距離はメールが作る親近感だ。

結衣だけの努力?
違う、いつだって愛美と里緒菜がお膳立てしてくれていた。

たかがメール、たかが携帯電話、
見えない意義を見落とさない人になりたい。