凄く楽しい。
恋愛をしたら凄く楽しい。
メールは楽しい、恋は楽しい。
楽しい分だけ罪悪感が芽生える。
そういえば、言われてみれば、思い返せば、――里緒菜はよくぽこりん話の引き合いに大塚を投入していたはずだ。
あくまでも『はず』で、近藤に夢中だった結衣は興味関心がないクラスメートの男子に纏わる話題など、
ごっそり聞き流していたため、朧げにしか思い出せない訳なのだが、
もしかすると、元・冴えなかった少年のお喋りをしている時の少女はキラキラと輝いていたようないないような。
ただ里緒菜は、好きな男の子が違う女の子を好きだと知っていながら恋をしたと喋っていた。
……なぞ
結衣が彼女なら、『あたし大塚のこと気になるからあんまり……』と注意を促したはずだ。
そう、仲良くしないでくれと牽制する。
どうして彼女はそれをしなかったのかなんて、たとえ一ヶ月熟考しようが、どうせ推理は外れる。
なぜなら結衣が里緒菜になることは不可能だし、
基準はあくまで己の経験が素なのだから自分に都合がいいようにしか立場をかえた空想しかできないせいだ。
里緒菜は里緒菜だからそうした。
結衣は結衣だから気付かなかった。
ああ、情けないったらない。
こんな人間を大塚はなぜ惚れたのか不思議だ。
彼が結衣に赤面するのは女慣れしておらず、また彼が結衣にまごつくのはデビューしたてだっただけで、
そこに恋心があるだなんて到底考えが及ばなかった。
……なんて本当に?
ここは得意のナルシストポジションになって考えてみよう。
鏡の奥に居る結衣は見えない。
蛇口から零れる透明な水は消えない。
なんとなく――……、
いいや。やっぱり恋愛感情を持たれていた要素はなく、
ただ、女子高生として好かれているとは察していた。
大塚ビジョンのE組の中で、結衣は可愛いとか憧れの対象として見られているのが分かっていた。
これが普通の子。無垢なんかじゃなく、自分の立ち位置くらい熟知している。
だが、まさか恋愛対象として存在するとまでは悟れなかった。
白い目を浴びせていたモテに鈍感なテヘッ娘のように大人力が不足していたことが悔しい。



