揺らぐ幻影


なんだか笑えた。
ほわほわとした無数のお花、甘い甘いバレンタインの香りが放漫する結衣の部屋、

大切な人を癒せる人になりたい。


このような状況を青春モノに投影するとしたら、

友人①の愛美は空気の読めない結衣の性格に徐々に腹を立て、

また友人②の里緒菜は結衣に好きな人を盗られたと嘆き、

結果、①②は連結し結衣と決別するらしい。

例えば露骨に意地悪をしたり、悪口メールを送信したり、

あえて大塚に婦女暴行を依頼したりするらしい。


なんとまあ、人格崩壊。
ある意味 戦慄。

なんだかんだで最終手段は結衣が好きな人・近藤を①②のどちらかが寝取ればパーフェクトなシナリオとなるようだ。

ヒステリックとクレイジーの違いは不明だが、とにかく親友は突然変異で奇行に走るらしい。


それがまた奇跡。あらまあファンタジックにラスト仲直りすれば、

涙無しでは語れない最強友情伝説の誕生となるらしい。

なるほど、とんだ内容だ。このような設定は大変引き込まれる。

もし連ドラなら次週が楽しみだし、漫画や小説なら次のページが待ち遠しいストーリーだ。

けれども、たいていの女子高生は自己と他者の関係を人並みに築くスキルは持っている。


前述のような展開が恋愛モノのお決まりだと勝手に先入観がある結衣なので、

ドラマや映画、漫画や小説には触れてこず、あらすじ以上に進めなかった。

食わず嫌いもやめてちゃんと触れてみようかと思ったが、やっぱりツッコみたくなるからやめておいた。


つまり、彼女には感情移入するピュアさが足りず、心が綺麗じゃない。

よって、作品を作品として楽しむ無垢さが欠落している結衣は思う訳だ。

友人らは現実の世界の人で、足りない主人公が恋愛できるように恩着せがましくなく、さりげなく笑える感じで応援ばかりしてくれる。


  頑張ろ

二人のために、この恋を無駄にできなくなる。


  頑張って好きになってもらう

決意をしたら話は早い。
大好きな彼に好かれるよう、お肌を労り眠ればいいのだ。

アロマのバニラとチョコレートの香り、アイスクリーム屋さんのケースを思わせる部屋で、

幸せ者の結衣は図々しく瞼を閉じた。

…‥