揺らぐ幻影


いつも自分のことしか見えていない無邪気と無神経は紙一重だ。

紛れもなく結衣は後者で、里緒菜や愛美や大塚を無意識に傷付けていた。


潤む視界、彼女が目頭を抑えるタイミングが分かったかのように、

『里緒菜は里緒菜で結衣は結衣。先行き未定な不況の世の中、普通にぽこりん里緒菜好きになるかもだよ? こわー。あはは。

だから頑張らないとなんだって! この愛美ちゃんに惚れるかもだし』と、

どこまでも愛美は愛美らしくジョークを交えて笑うのだ。


結衣の悔やみと里緒菜と愛美の温かみに涙が溢れるか溢れないかの時、

『あんたのウザさなら知ってるから大丈夫だって! 今更反省とか不気味でやだ!』と、

再びゆるく畳みかける話術にどれだけ救われたかを、知っているのだろうか。

どうして絶妙なタイミングで笑い飛ばしてくれるのだろう。


人間まだまだだと思った。
まだ十五歳だけれど、未熟も未熟だと痛感した。


なぜかというと正直に話すなら、結衣はこの期に及んで里緒菜と愛美の仲に嫉妬していたのだ。

そう、二人が自分の知らないところで秘密に話を進めていたことは、仲間ハズレみたいで悲しかった。

それが優しさだと伝わるのだけれど、それが己の幼さだと承知しているのだけれど、

我が儘な感情をさらけ出すと、やっぱり秘密を打ち明けてほしかった。


例えば愛美。
彼氏と別れる前の悩みや別れた時の辛さ、破局後の悲しさを。

例えば里緒菜。
大塚を好きになったときめきや、片思いの悩み、違う人を好きな苦しみを。

共有したかった。役に立ちたかった。

それを全て結衣のために――?

  欲張り、私


精神的な意味で早く大人になりたい。
悩みを受け入れて、二人を支えてあげる人になりたいと願った。

それを叶えるには、結衣が何をしなければいけないのかが腐るくらいに心得ている。

今泣けば自己愛構ってちゃんだ。


黒いTV画面に白いテロップが出る毎に光度が変わり、ウサギのリボンがピカピカと輝く。

その煌めきはYのストラップとそっくりで、つまり三人の仲の象徴だ。


きっと今こそが定番の絆とか言っちゃいたい時なのだが、

キャラがブレるため絶対口にしないと結衣は決めている。