揺らぐ幻影


たかが恋愛、されど恋愛、思春期は難しい。


まだ自我を形成できていやしないのに、他者に不満を持ったりイラついたり、

何より、そういった人との関わりが成長するには必須なのだけれど、

そうして明日の自分が作られるなんてややこしい類いを深く考えることが苦手な結衣は、

雰囲気で生活する子のため、

いちいち人がどうとか自分がどうとかあんまり興味がないのだけれど、

その脳天気さはクラスメートに羨ましがられたりする。


ある程度良識が備わっている女子高生の今、

三流の彼女は人間性にマニュアルは通用しないと踏んでいる。


例えば血液占いとか家族構成、性格を型に嵌めて何になるのか教えてほしい。

だって経験で中身は皆違うのに、『B型だから』、『一人っ子らしいね』と、

相手の若干気に食わない部分をタイプに色付けすることは、コミュニケーション不足の逃げ道になる。

ろくに絡んでない奴ほど『あの人はああだから』と決め付ける。


と言えば、結衣は先入観の強い人を否定する反論派と思われるかもしれないが誤解だ。

時々、クラスで信じる人が信じない人を説破しようとし、

信じない人が信じる人を説得しようとしたバトルを繰り広げるのだが、

『たかがそんなもんにヒートアップするんだ』と、ぼんやり眺めるのが結衣だ。

そう、どっちでも良いと流すタイプ代表だ。


従って、思う訳だ。

客観的なんて名ばかり。
育ってきた環境が所詮基準になっている恐れがないとは言い切れないのかもしれない故に、

いい・わるいの判断は人それぞれだから多分お互い歩み寄るよう約束事があって、

要するに告白された後の対応なんて、

何がアリで何がナシかなんて、状況次第で分からない。


まだまだ幼い学生時代は天然否定の過激派が多いものの、

卒業する頃には一周して天然容認派が増えたりする不思議。

男子に媚び売る女子にムつくことが、羨望だと気付いたり、

異性だからこそ穏やかに物事が進むなら、多少ぶりっ子してヨイショをすれば世の中メリットがあることを学んだり、

主観性が変われば客観性も変わる。


それでも変化しないのは近藤を好きな気持ち――ほら、なんてロマンチック。〆はこれで良い。