揺らぐ幻影


もうしばらく脱線は続行する。


嫉妬していると言われるので、皆は表に出さないせいでややこしいのだが、

告白にイエスかノー、

これを瞬時に返答できない女は、不思議と同性から少々軽蔑される傾向にある。

男心を弄ぶことがステータスに見えるのだそう。


中途半端な態度が相手に失礼で酷なことだと普通の女子は分かるため、

どうもいけすかないらしい。


つまり、恋愛モノに抜擢される素直なヒロインは、いい子なのかという話になるらしく、

そういう世界では鈍感・天然は、イコール可愛いと好印象な単語に結び付く流れが多いが、

実社会では非常に厄介な自己愛に満ちた人なだけで、好感度が上がることはない。


結衣が生きる日常では、とある少女が本当に悩んで少年に優しい言葉をかけたとしても、

『男友達としてしか考えたことがなかったよ』『アタシ今は恋愛したいとかなくて……』、

『アタシなんか勿体ないよ』『他に良い人がいるよ』――なんて悩み抜いた返事は、

誠実な返しになっておらず、『さっさと振れ』とブーイングが起こりがちだ。


端的に言うと、うやむやにキープをするしたたかな女とみなされるだけで、

無垢が成立するのは非現実的であり、現実しかないこちら側では困難なのだそう。

悲しいし美しくはないけれど、きっと教室にある暗黙の価値観だ。


思春期は男子の支持率なら簡単にアップできるけれど、

リアリストな女子の信頼度を得るには、倍の時間と本当の態度を要するのだとか。


性別なんて関係ないが、仮にも学校が主軸の女子高生は異性よりまず同性からの票が欲しいもの。

そんな中『天然テヘッ』では非常に白い目で見られるだけで、

現代版・郷に従え、他人の評判ばかり気にすることはよろしくないものの、

自分たちは校舎で暮らすため、ある程度皆の快・不快を配慮する美学を疎かにできない。


そして田上結衣、彼女は純情ではないので、数々の女子界における掟は分かっているし、注意して過ごしている。

またシビアな性格のお陰で、既に男子からそれなりの投票数を集めていることも承知していたりなんかする。

ちょっぴりナルシストな部分もあるが、結衣のみでなく皆に当て嵌まることなので普通だ。