揺らぐ幻影


こんなことがあるのかと、信じられなかった。

まさかのまさか。
友人が自分のことを好きな男子を好きで失恋していた設定は、

女子高生における歴史的出来事に値するであろう。


どうやって電話を終わらせたのか、結衣は覚えていない。

虚無感に浸る権利などない癖に、どうしてもやるせない気持ちが溢れて部屋を埋め尽くす。


大塚を慕う里緒菜の気持ちなんて知らなかったし、てんで気付かなかった。

そう告げると、確か彼女は笑いながらこんなことを述べたと思う。

それが結衣の魅力で、おっとりしてるからいいのだと、もっと魔性に計算すればいいと、

咀嚼しようも納得できないせいで、何も飲み込めない。


繋がっていない携帯電話を眺めた。
Yのイニシャルは結衣のYで、近藤のY。

Rは里緒菜のR。

ああ、大塚の下の名前、イニシャルさえ浮かばない。


愚かほかならない。

導かれるように視線を運べば、ウサギのお財布がキラリと光る。

仲良し三人組、友人の定義とは何なのだろうか。

  魅力?

  、らしい?

田上結衣という人間はどれだけ有害なのか。

愛美が別れたことに気付かず恋愛相談をして、里緒菜の好きな人にチョコを渡したりなんかして、

そんな奴は周りを引かせる天才だ。


  どうしよ、

どれだけ無神経な発言をしていたのか見当がつかない。

なぜ隣の席になってしまったのだろう、その程度、それ以上はなかった。

教室の左側が大塚だろうがなかろうが、結衣にとっては関係ない。

  里緒菜、

  でも……

自分自身に苛々して、衝動的にパンを両手で潰した。ぐにゃりとした感触が無性に辛かった。



もし近藤が里緒菜を好きだと分かっていて、

それでも里緒菜と仲良く出来るのかと言われたら、結衣は里緒菜のようにはなれない。

羨ましいし、彼の好意に気付かない愚図さに苛々するだろう。

それでも見捨てず仲良くしてくれていたのに、大塚に好かれて困るだなんてよく言えたものだ。

寛大な優しさが辛い。
器量のなさを優しく返されると、なんだかふがいない。

ネガティブなため息で、ふんわりとした可愛らしい花が枯れてしまいそうだ。