レースカーテン越しにこちらへ入ってくる温かな日だまりが柔く部屋中へ浸透すれば、
必然的に心は落ち着くはずなのだが、頭を振る少女は感情に手を付けられずにいた。
「えへ、へ?」
なに、? 里緒菜、今日
、変、なんか
友人歴十ヶ月、ケータイ世代的な上っ面の付き合いをしてきたつもりはないのに、
全くもって友人の発言内容が分からない。
動揺していたのか、握りしめ過ぎていたらしくジュースの角が凹んでしまっていた。
足が当たったのかオール再生でお笑いのDVDが流れ始め、
玩具箱をひっくり返した時のような面白いだけの音は、
里緒菜の自虐的な話し声に打ち消された。
『私のチョコ貰ってくれなかったんだよねー、あは、大塚が好きなフォンダンショコラだったのに大塚の癖にうざくない?、なんだかなーアトウさんー、はは』
「……、は?」
『結衣の明らかに義理なのに。結衣のしか貰わないとか古風過ぎるくない? 大塚の癖にうざっ、あはは。
カミングアウト、里緒菜ちゃんはね〜冬休みから彼を好きだったの〜、みたいな。あは』
彼女が奏でたクラシックをかみ砕く余裕がなくて、
置き去りとなった思考とは別に、優秀なお口が勝手にお喋りをしてくれた。
「冬休み、片思い?、一緒、じゃん、ねえ、聞いてな、い……そんな、」
好き? 大塚を? 里緒菜が?
チョコ? あげた、の?
……好きって大塚を?
知らない、聞いてないよ、
すぐに働かなくなる頭をコンピュータのように賢く改造してほしい。
状況がイマイチ掴めない。
けれど、『心配とか臭いのいいから、私タフなんでもう平気。てか結衣を好きって知ってたから全然大丈夫、積極的に当たって砕けてみた、はは』と、
里緒菜はすっかり自己完結できているらしく、あっさりと笑いながら失恋したのだと打ち明ける。
真昼に太陽がなくなると、世界は色を無くしてしまうし、
たちまちお花畑の国は枯れてしまう。
「、ふ、なに、違……、なん、里――知らな、 私……何、」
震えた声に強さがない。
そう、好かれて何が困るかって、それは友人の好きな人に好かれること。
ただそれだけ。



