揺らぐ幻影

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白い太陽が空の天井から落ちかけて、お昼が過ぎたと主張している。

ベランダに干してある洗濯物が揺れる荒さで、コートが欠かせない一日になることは十分に伝わった。


アラームなしで自然に任せてのったりと目を覚ました結衣は、

歯を磨いて顔を洗って髪の毛は二つに括った。

そしてのんびりと部屋着に着替えれば、家スタイルの完成だ。


半額のお惣菜パンとパックの野菜ジュースを小脇に抱え、

再放送の推理ドラマは元から興味がない上、いきなり五話だと訳が分からずつまらないので、

自室で里緒菜に借りたお笑いのDVDを見ることにした。



どうやら彼女、今日は怠け者としてのんびり時間を送る予定らしい。

学校のない日だというのに、つまり会えない日なのに、結衣はご機嫌だった。

その幸せの仕組みは、購買で近藤がケーキの話を最後にしてくれた風景を思い出せば完璧で、

もうニヤニヤして堪らなかった。


  向こうから話してくれたもん

  嫌われて、ない、もん

ベッドにほったらかしていた携帯電話、Yのストラップ、

ピカピカとメール受信を知らせるランプが光っていた。


クーポン券のDMだろうと開いた画面に浮かぶ文字は、


《付き合って下さい。好きです。》

百パーセント告白の言葉だった。


「……――?    へ、……えっ?、……、!    なんっ……で何、好、き――? は? なに」

胸中の想いを堂々と声にしたので、まるで誰かと話をしているかのよう、

大きな独り言を零すくらい結衣は仰天していた。


  え、……なに

  なんて返そう

  てか、待って、なにこのミラクル……

  は?


女子高生になったら彼氏が欲しいと思っていた。

とにかく恋をしたいと思っていた。

近藤の彼女になりたいと思うようになっていた。

それはもはや夢ではなく、近々現実にするべく頑張っていて、それがどうして?


訳を聞かせてほしい。
心臓が煩くて、壊れたんじゃないかと怖くなる。