「かわい」
「お持ち帰り?、したい」
「高いよ私」
「静香割烹着?だよ」
「三千子もレトロ?」
「えーハイカラさん」
三千子と静香のハテナは質問ではなく雰囲気の演出で、
喋り方は移るらしく、服飾コースの女子生徒は似ている。
彼女たちだから都会的に思えるだけで、
勘違いな人が同じような口調なら頑張っているとみなされる高校生らしい価値観は、あまりにシビアである。
甘く微笑む市井に一言文句を投げたかった。
『近藤を連れてきてくれたらいいのに』と、少し欲張りで調子に乗った不満だ。
新たに大学生あたりのお客さんが来たため、結衣は彼らを案内する。
メニューを広げる姿、三千子と静香はさすがマドカの服コで、
すぐに視線を独占し、「可愛くね?」「マドカだ」と賞賛している声が上がっていた。
可愛いもん
本物だし
ハンバーグやミックスフライ、がっつりした食事の注文をとりながら、
美女と顔見知りなのだと誇らしく思う結衣は横目で三人を追った。
「イッチー結衣ちゃんに甘い」
「あやしー?、彼女サン修羅場」
「はは、好きだよ」
洗練二人が凡人の話題を出すだけでもびっくりしたのに、
まさか市井までもがそう出るとは思わなかったので、
店員は大変驚愕して、オーダーを繰り返す際に噛みまくってしまった。
腹黒くない?
気がないから言えるのは、さすが王子様。
甘い台詞は一瞬学年をまとめるあの服コの女子生徒に誤解されたら困ると不安になったけれど、
逆に恋愛や人間関係において達観しているあの服コだからこそ、
彼に含みがないときちんと理解していることだろう。
なぜならゴシップを広めるのはいつだって冴えないグループ出身で、
もしかするとその人は自分を皆に注目してほしいから吹聴しているのかもしれない故、
既に人気者の服コに限って、噂話を嗜むなんてありえない。
楽観的な結衣は自己完結させ、厨房へと向かった。
本当に可愛いと言われたい。
本当に好きだと言われたい。
それはたった一人だけ。
星の瞬きが分かるくらい目が良くないけれど、綺麗な夜空の下、恋心だって負けない程度に輝いていた。
…‥



