揺らぐ幻影




遠くからも分かるように光るロゴ入り看板、メニュー表記した旗、

駐輪場に連なる学校独自の鑑札付き自転車は赤や黒、紫や青、

カラフルな愛車が通行手段だ。


「ホワイトデー楽しみだね、こっちまで緊張」

「はい頑張ります」

平日のファミリーレストランは暇なので、厨房の女子大生と結衣は楽しく談笑していた。

もちろん近藤がテーマと、もう決まっている。


「でもミー普通に彼氏居ないの意外だけどね?」

少し嬉しいことを言ってくれるが人間サービス精神旺盛なのだ、ヨイショだと聞き流すものだ。


だから、結衣は一回頷き学生らしい例文を読む。

「可愛すぎるから高嶺の花すぎなのかなあ〜? みたいな、ですよ」

フォークやスプーンを箱に入れながら、わざと自意識過剰ぶった発言をした後に、

下唇を裏返し半目状態なおもいっきり変な顔をして、

定番のナルシストめ的なツッコミを期待したウケ狙いだったのだけれど、

「うん、普通にそう思うよ」と、真顔で返されてしまったため、

一瞬ホッペが赤く染まりかけたが、直ぐさま「ですよね?! もうアタシ可愛い」とおどけてみせた。


「いやいや冗談、アタシのがミーよりカワイイし!」と、くだらない爆笑にご機嫌な二人は、

こういう故意に痛い女を演じる会話が楽しいし凄く盛り上がる。



入店を知らせる音が鳴り、サボり魔の結衣は入口へと足を走らせた。

後ろのリボンを一旦きつく結び直し、にやけた延長の笑顔を仕事モードに切り替えてみるも、

やっぱり近藤が消えてくれない。


「いらっしゃいま、っ、わー、やだー!」


「頑張ってるね」

「まじで働いてる」
「可愛い制服」

店員はお客さんを見て叫んでしまっていた。


「市井くん!」

市井、そしてF組の女子生徒二人が居た。

唯一の男子含む三千子と静香は服飾コースのトップスリーで、

彼らは離れ校舎で行われている講座の帰りに寄ったんだとか。


偶然にしては三人のリアクションは彼女がここで働いているのを知っているようだったので、

変なのと首を傾けかけた時、市井が笑った。

「洋平に聞いた」

二秒後にホッペが桃色に染まるのは言うまでもない。