大好きな近藤に真剣に目元を探られ、なんだか恥ずかしくて、
結衣が注目しろと言った癖に、
結局、「髪っ、ちょっと落ち着いたくない? グルングルン辞めた」と、
彼の目線を自分の顔から髪の毛へと誘導したのだった。
「はは、いい子」
笑い顔が好き。
せっかく綺麗な瞳をしているのに、なぜ前髪を伸ばして魅力を隠すのだろうか。
勿体ないと思ったけれど独占欲が生まれたので、内緒で散髪禁止令を発案しておこう。
目を指差して髪の毛を持ち上げて、そんな友達のノリしか出来ない自分自身がもどかしい。
本当ならこれは女を意識させるチャンス。
モテ子さんらしくまつ毛をパチパチ動かし熱視線を送り、髪の毛を彼に触らせるべきだ。
それが出来ない子は女子高生として小悪魔さが欠けているのかもしれないと、
反省会をしている場合ではなく、
リベンジで毛先を触らせるべきなのに、「てか年明けさ、笑っては〜見た?」と、
結局、アプローチを終わらせ話題転換させてしまう性格が歯痒い。
「当たり前。気付いたら年明けてたから一人。はは、イッツジー」
「うははっへへ、面白かった、小銭」
それでも近藤の笑顔を見られたから正解?
「じゃ、俺も糸買うから」
バイバイと手を振って、重力だけに操られた腕が勢いよく太ももで跳ねた。
、うははって笑うかな、うふふでしょ
どうして友達面しちゃうかな、告白したんだから女らしく
全然ぶりっ子できないし。女子したい……あーあ
前と変われない
通学ラッシュの購買ラッシュに背を向けた。
生徒の波に逆らって出口に向かう少女の肩は落ち込んだ気持ちの分、
重たく下がってしまう。
「ケーキ。お店より美味しかった、って。良平」
振り向いたけれど、人混みの中に姿がない。
なに、これ……
とんだドッキリではないか。
落として上げる飴と鞭。
ますます好きになるでしょう。
近藤洋平は策士なのだろうか。
よく晴れた日の海が似合う青い空には、初めてバラ口金で生クリームを絞った時のような不格好な雲がいくつか浮かんでおり、
それはそれは微笑ましくも甘い景色だった。



