もしかすると購買で初恋が売っているのかもしれないと、
おかしな空想してしまうのは、そこに好きな人が居るからだ。
校則で黒に決められた髪の毛のはずが、生徒の数だけ違う色をしポコポコと浮かぶ。
もう幼子ではない。
どうしていけないと注意されることをあえて破りたがるのか。
それが学生という枠内の定めなのか、月日が経てば若気の至りは当時の仲間内でのテッパンだ。
好きだと告げた、名前を呼ばれた、それだけで自己啓発本よりも変われるのが、逞しい女の子だ。
「おはよ! えへへ」
見ているだけの背中にペチっとウサギのお財布をぶつけてみる。
ブレザー越しにときめくなんて、いよいよ末期かもしれない。
大丈夫、大丈夫
「あ、はよ」
軽い挨拶がてら振り向いた近藤はきっと自分の魅力を分かっていない。
存在しているだけである意味、悪。
恋をした結衣にお化粧や髪を頑張らせたのは、彼。
白いホッペにまつ毛が落ちている。
どうして男の子は女の子よりも肌が綺麗で、まつ毛が長いのだろうか。
どうして男の子は女の子をドキドキさせてしまうのだろうか。
親密な距離になりたい。
ニコリと微笑むも、彼はまだ高い塔の方だと痛感する。
ピっと摘んであげる仲ではない、届かない手はスカートを握るくらいしか能が無い。
「おはよ田上さん、よーへ、俺レポート用紙なくなるんだよ。待ってて」
その後ろ姿は正に王子様で、あっという間に消える雪みたいだ。
皆が憧れる少年は、凡人少女を応援しているらしく、
たった今、彼は結衣に近藤との二人だけの時間をくれた。
言葉の中身を探れば答えがある。
そりゃあレポート用紙はいつか無くなる、恐らくまだ必要ないはずだ。
市井はそういう人。
きっとそういう人。
わざと消えてくれた。
仮に思い違いの過大評価だとしても、優しい人だと設定すれば結衣は笑顔になれる女だ。
誰かに気遣いをされると、頑張らなければと張り切れるのが田上結衣の長所だ。
ウサギのお財布やイニシャルストラップがある。
大丈夫と脳みそにインプットさせてしまえば、単純な彼女はきっと粘ることができる。
「ほら見て、目。ラインやめた」



