揺らぐ幻影

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用務員さんがお手入れをしている中庭のお花たちは、朝日を浴び空に向かってオシャレをする。

自宅であのふわふわとした鉢植えを育てていると、妙に花壇を追うようになった。


お化粧室で身嗜みを調えるのが毎朝の日課、恋をする子高生の基礎だ。

「良かったね」
「問題ない、ペンギン」

そして愛美と里緒菜にメールのやりとりをチェックして貰うのも習慣だ。

いつも通りだけれど、今朝はメールだけではなく電話がかかってきたことを褒められご満悦の結衣だ。


愛美と里緒菜、二人の性格は区別できず、

あまりに似ているのではなく、一緒に居る時間がそうさせるのだろう。

家族の口調が移るように。


「はい、これオソロ、結衣ピョンの」

背が低い友人が摘んだのは、Yの字がキラキラとスワロフスキーで縁取られたストラップだ。

「昨日遊んでー買った」と、里緒菜は得意げに説明を付け足す。


「うそー! 可愛いー」

親指と中指で丸を作ったくらいの大きさのそれは、

キラッキラに輝く感じが結衣の食いつくポイントを心得ている。

里緒菜の携帯電話にはRが、愛美の携帯電話にはMが、結衣の携帯電話にはYが、

それぞれの携帯電話がオシャレに着飾った。


「やった! ありがとー可愛い、うれし」

ブレザーのポッケからわざとはみ出させる。

そう、たかがストラップさえ仲良しアピールアイテムとして、

しっかり制服コーディネートのアクセントにするのが女子高生という生体である。



「それ洋平のYだから!」

「結衣のYじゃないから」


  、! ようへ、い……

してやったりの二人を前に、Yの字が当て嵌まる少女の顔は真っ赤になった。

  ようへいの、Y…

意味を理解して叫んだのは、「それヤダ、引く!!」という照れ隠し。


足並み揃えてお化粧室から去る三人娘が次に向かう先は購買で、

とくに必要なものはないのだが、

ターゲットは必ず登校時に何かしら立ち寄る情報を里緒菜が仕入れたせいだ。


そして予想通りに見つけた背中はもう率直にイケメンだった。

この瞳は好きな人を映すために存在しているのではと、重たく勘繰ってしまう。