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案の定アルバイト先でも褒められたので、やはり今までメイクや髪に残念な時間を費やしていたのだと失笑せざる得ないが、
やや可愛く進化した点は素直に嬉しい。
ただ、せっかく変身したのに学校で近藤に会えなかったため、結衣は無念でならなかった。
となると、彼と彼女を繋ぐのは眠る前のメールだけだ。
少女の部屋に漂うアロマポッドのりんごの香りは、
まるでアップルパイを作る時のような楽しい気持ちにさせる。
《奥サマにオシャレショージ教室してもらった笑。人的ビフォーアフター》
《おでこだしてる子っけ。どのようなイメチェンをなさった訳?》
《その子。ちょっと乙女は頑張ってみたから明日ジャッジしていいよ》
少し色恋沙汰を交えたかった。少し恋愛面でアピールをしたかった。
ほんの少し、見てほしい。
『あなたの為にイメチェンしました』と言っているのだから、
愛美と里緒菜に絶対褒められる行動がとれたと誇らしく思える。
頑張ったらきっと上手くいくと、小学校の道徳で習ったなら正しいはずだ。
努力は報われる説に間違いを教わるはずがない。
けれども、近付きたいという気持ちは、受信メールの《了解、》の文字に呆気なく裏切られた。
一生懸命になれば結果が出る教育は嘘?
ヤケドをした瞬間のように、ヒロインらしく胸が痛み疼き出す。
ひょっとしなくとも結衣は愚かだ。
そう、完璧に自惚れていた。
バレンタインに会ってくれた、チョコを貰ってくれた、告白を聞いてくれた、
だから少しは脈があるのではないかという所期がなかったかと咎められたら嘘になる。
多少は好かれている自信があった。
過信は己を傷付ける。
了解なんて簡単な単語で済まされるなんて想像してもなかった。
甘い皮算用をするからこうなるのだ。泣きたい心境になるのは自己責任だ。
恋愛を匂わすメールが欲しかった浅ましい自分が嫌になり、
とりあえず子機だと愛美の電話番号を押そうとして、鳴り出したのは携帯電話の着信を知らせる曲だ。
親友と以心伝心したのだと、「今メールしててー」と突然話し出す結衣に合わせて、
耳に届くのは、いつものように『ぽこりん?』という呪文だと正しい。



