揺らぐ幻影


日なたは温いのに風が吹くと寒い、ややこしい季節を上手にやり過ごしたい。

マイナスとプラス両方を調和できたら、この恋は明るい気がする。


先生が教科書を読み出すと同時に振り返った女子生徒は言った。


「ラスト質問! 本当にしたことないの?」

疑問文の割に答えを知っている目は意地悪だ。


したことがあるかないかの二択が何を意味しているのかは女子高生、

半笑いの顔から答えは一つ。

途端に先程の大塚並に真っ赤になった結衣が、どう返事をしようかと思案していると、

彼女にダイレクトな単語を告げられびっくりしたし、からかうような視線に身体が熱くなった。


  、だって……!

あんまり仲良くない人に気にしていることを触れられると気まずい。

愛美や里緒菜は恐らく二人の時は語るのだろうが、結衣に気を遣ってかあえて話題には出してこなかった。

いいや、実を言うと入学したての頃は何度か二人が話を振ってきたけれど、

結衣が居心地悪そうにしていたのに気付いたらしく、

いつしか年齢制限アリなテーマについてお喋りをしなくなっていた。

恋人が居る子の会話としては明らかに削ぎ落としたジャンルがあり不自然さがあったけれど、

だからといってぺちゃくちゃ聞かされても、

無知な彼女は大塚を真似る自信しかないし、なんて相槌をしたらいいのか分からないし、

だから救われていたのに、「可愛い反応、でも結衣ちゃんチューもまだとか焦らない? そろそろヤバいよ」と、

少しお姉さんぶられ、何も返答できず唇を突き出した。


ここは教室で皆が居る。
もしも聞こえていたら恥ずかしくて困る。

ちらりと周りを見渡すと、真っ赤な顔をした大塚と目が合って、気まずいったらない。

冗談は得意だけれど、あまりにオトナな内容だと戸惑うしかできない結衣だ。


嫌だなと思った。
それと比べて愛美や里緒菜は優しいなと思った。
結衣の心境を読み取ってくれる二人が嬉しい。


「来年は十七。もう女子半分は卒業してるよ? 結衣ちゃんなら男子待ってるって」

いらない心配いらない世話だと不満に思う。

  別、に

  ほっといてよ

なんだか彼女に話しかけたことを、勝手だが後悔してしまった。