揺らぐ幻影


答えを、一つ。
皆は答えを持っているのだろうか。

その信念は永遠に変わらないのだろうか。


それでも今、一つのことを曲げずに貫けば、協調性が足りないとか頑固者だとか言われる。


変わらないから美しい?

十年後にも同じ答えなら、それは十年間成長していないということになるのではないだろうか。


なんて、愚問。

揺るぎない想いがきっと綺麗なのだろう。

いいや、ぶれそうになる時にしっかりと信じるから綺麗なのかもしれない。


ううん、やっぱり分からない。

そういう大きなテーマはどうもころころ矛盾してしまう結衣だ。

ああ、もしかしたら彼女は近藤と同じにするかもしれない。

等しい視線になりたい。


なんて、どこまでもハッピー思考なキャラクターではない。


不安はある。

きっかけを思い出すと乙女心は複雑だ。

結衣が近藤と仲良くなれたのは、やはりメールをした影響が大きい。

ユニークな内容のやりとりは楽しかった。


  ……。

大塚が『女子がアドレス教えてって』と言って、『いいよ』とすんなり承諾した近藤、

結衣が『田上結衣です、メールしましょ』と言って、『いいよ』とあっさり了承した近藤、

結衣のことを知らなかったのは近藤、他人だったのは近藤、

片思いが趣味の人間はシリアスに悩める訳で、

結衣が相手じゃなく別の子でも彼は――

メールをした? バレンタインに会った? チョコを貰った? 彼女候補にした? 約束をした?

結衣と同じように扱った?


好意を持つ女の子には、分け隔てなく笑うのだろうか。

そんなの嫌だ、わがままな結衣はそんな近藤は嫌だ。


結衣だから、結衣じゃなきゃだめだと、そう思われたくて堪らないのに、自信なんかない。

もし別の子がアドレス教えて下さいと頼めばメールをするのだろうか。

笑いかけるのだろうか。


だって、今こうして近藤との関係がスムーズだから怖い。

なんだかんだで良い感じに進んでいるのは、要するに結衣が手頃のせいではないだろうか。


誰でも良くて、恋人が欲しい時期に結衣が居たから彼が乗り気になっているのなら、

それってリアルで怖いし、頑張っても笑えない。