一時間目の支度をして席に着く結衣は、
クリスマスの象徴、柊の実がくすんだような色が窓の隙間から覗かないかと待機モードに入る。
空いた時間は好きな人をあれこれ想えるので、
もしも付き合ったとして、仮に近藤が遅刻魔でも平気だなんて思う彼女は、
まだ何も相手の内側を知らないのに、相当彼にベタ惚れらしい。
妄想は続く。
デートはお家まで迎えに来てくれるのが嫌で、
『待った?』『遅いよ』なんて王道の会話も楽しみたいし、
周りの景色をぼんやりと見ている待ち時間でもデートの始まりになっているしで、
約束した場所に集合したいと夢見る心は幼いのだろうか。
お花畑の世界は幸せしかない。
すると願いが通じたのか――残念、目についたのは愛しの彼の友人だった。
「おっはよーとか、えへ、へ。おはよ」
堂々と窓を開けてオープンに話しかけたら、また余計な噂をされ兼ねない。
なので十五センチの隙間から手だけ覗かせ声をかけた。
入学式でチェック済みだった市井はいつだって変わらない。
ずっとずっと完璧な王子様オーラを出しているので、やっぱりE組に馴染まないと思う。
隙間から侵入する寂れた空気が冷静さを教えてくれる。
皮膚に溶け込むのは何?
以前の結衣が市井に絡む理由は、
明らかに近藤の友人という肩書きへの魂胆、利害関係のみだった。
申し訳ないけれど、本当にあわよくば好きな人との掛橋になってくれたらというやらしい下心があった。
しかし、遠巻きで見るのではなく、こんな風に直接話を重ねるうちに、
市井雅という人間と一緒に居る時間を心地良く過ごすようになっていた。
普通のクラスメートの男子と一緒で、話したいから話す単純な気持ちが働き、
王子様として壁を作らなくなっていた。
とはいえ、変化をもたらす根底には、
それだけ近藤を好きだという気持ちがあるためだろうけれど。
今や結衣自身の友人ポジションとなった彼が唇をメイクと動かした。
そして、こっちの方が結衣らしくて可愛いと言う。
らしさを持たれているとは、彼の中で己がきちんと存在していることを意味しており、
近藤の友人と距離感が非常に縮まっている状況が嬉しい。



