揺らぐ幻影

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見上げる範囲で高さに限度がない空に浮かぶ雲は、なんだかみぞれを集めたみたいだ。

大根おろしは大変で、力の加減が難しくて途中で手首がだるくなってしまい、

苦労して半分削ってもお皿にとればほんの少量で、煩わしいと毎度思ってしまう結衣は、

やはりお料理上手とは呼べない。

短絡なフードプロセッサーが似合う人々の感情を巻き込む風はうるさいばかりだ。


「えー? 誰?」
「イメチェンとかー?」

愛美と里緒菜の反響に照れて、

「整形かー? 美女発見」
「田上さん男できたか?」

クラスの男子の絶賛にはにかみ、


「結衣いーね、清楚」
「かわいー」
「すっぴん? 可愛い」

クラスの女子のお世辞ににやける結衣だ。


心機一転とは正にこのこと。


植物を目覚めさせる太陽のように明るいエネルギーを放出させている自信がある。

昨日、学校をサボって奥から受けたレッスン通り、結衣は本日イメージチェンジを試みたのだ。


薄いメイクだがアドバイスのお陰できちんと目力もあり、

以前の頑張っていた厚化粧よりも好感度が良いと手応えがある。


そしてヘアスタイルもがちがちに盛るのはやめて、トップはドライヤーの熱で温まる太いカーラーでふんわりと、

全体はぐるんぐるんに巻くのをやめて、ストカールとかいう毛先だけをCカールにさせたお陰で、

清楚さを演出できているようだ。

それがまた、クラスメートからの評判がアップする一方だなんて皮肉だ。


  奥サマって凄いな、やっぱ

お化粧や髪にかける時間が大幅に減少した割に、ここまで好評だと、

昨日までの自分は一体どれだけ誤ったオシャレをしていたのかと恥ずかしくなる。


振り返るのが怖い。
母親のバブル時代の前髪や、姉の九十年代後半の金髪、本人いわく後からすれば笑えるのだそう。

となると、昨日までの結衣が滑稽になる歳がいずれ訪れるのかと思うと、

何だか微妙な心境だが、今が良いならOKだし、未来に出オチのネタが増えるならと前向きに捉えることにしよう。

結果尊重、少々目を瞑れば問題ない。

何事にも後ろ髪ひかれず猪突猛進であることが片思いの基本だと信じたい。