揺らぐ幻影


服を試着した時みたいに、鏡の中にいる女の子を見るとドキドキして気分が良くなる。

自信を持てた日は多分、そこそこ綺麗だ。


甘いジャムの瓶は凄く固くて手強く、素手ではなかなかあけられず、

輪ゴムを巻いたりゴム手袋をしてみたり、色んな人にアドバイスを貰い知恵を働かせる。

お湯に蓋を浸けてカポっと外れた時の達成感が好きだ。


今、結衣は満たされた気持ちでいっぱいだった。

ふわふわな感情をフラワーシャワーにしたらきっと幸せで、

近藤に恋をして笑顔が増えたと、どこまでも大袈裟に感謝しよう。


確か入学してすぐの奥は、独特の粘っこい声で『彼氏がタイプ』と言っていて、

当時の彼氏は殷賑な印象だったが、新しい彼氏はぽっちゃりして共通点が見当たらない。


皆が持っている理想のタイプ。
近藤はどんな子にときめくのだろうか。


ギャルが好きなのかは謎で、あれが結衣のはやとちりなのかさえ不明で、

すぐにだって本人にメールで確認できるのに、タイプを聞けないのではなく、あえて聞かない。

なぜなら、惚れた相手に理屈なんて関係ないせいだ。


彼の理想を砕いて、田上結衣に惚れられたい。

陳腐を魔法に頑張ろう。
可愛くなりたい。
可愛くなりたい。

好きな人がはにかんでくれるような女の子になりたい。


寒い日は遠くがはっきり見える気がするけれど、どうせ勘違いだ。

煌めきを纏った結衣は、せっかくなので奥とプリクラを撮りに行くことにした。

ちなみに、平日なので補導される確率が高いものの、それを武勇伝にしたがる派ではない。


嬉しいから、楽しいから、好きな人に会いたくなる。

ナルシストにならなきゃ恋愛なんかできない。

卑屈になるんじゃなくて調子に乗る、その痛さが素敵に立派な役割を果たし、

それが声となり笑顔となり魅力となる。

ほら、真実の湾曲なら得意だ。

外見を取り繕えば、きっと彼女になれる。

奥や姉とコミュニケーションをとって中身が成長するなら、変身することは一石二鳥ではないか。


浮雲の追跡はしない。
眩しい太陽はさしずめとある少女のハートの温度、

冷たい風には負けるやわな初恋が実る春になればいい。

…‥