揺らぐ幻影


まるで雑貨屋さんのHPのコーディネート例みたいな奥の部屋をプロみたいに綺麗だと褒めると、

四歳年上の兄が家具屋で働いており、

一人暮らしの彼が買い取ったインテリアの置き場がないから押し付けられたのだと言われ、

結衣は少しだけ安心した。

いくら彼女がオシャレだとしても同い年、

さすがにまだ高校生だと、アルバイト代では賄えないなとちょっと金銭面で疑問だったし、凝った趣味が本格的過ぎるなと謎だったので、

かなり納得した訳だった。


近藤はどんな部屋に住む女の子が好きなのだろうか。

学習机を大事に使う子? 自室を持っていない子? カラーボックスを有効的に利用している子?

どうかバレンタインのお花を飾る子であってほしい。


全体を観察したいのか奥は結衣の肩に手をかけ距離をとると、

しばらく考えた後、「付けまつ毛は目尻のシャドウ覆うようにチョイはみ出るくらい、部分用のね。控えめの、濃さはいらない。でもー」と、

メイク方法を口にするも、

もう一度首を傾け、「やっぱ結衣ちゃんダメ。自まつのが顔に合う。

で、アイラインを。目頭に一ミリも満たない程度に――ただ結衣ちゃんやり過ぎ、舞台メイクになってる時があるよ?」と、判定をした。



「……ん?」

  舞台?、

気にしている部分を指摘され、一瞬結衣は言葉を失った。

少し離れた目はコンプレックス、クラスメート半分の女子が悩んでいるのではないだろうか。

現に結衣の友人周りで行われるガールズトークで頻繁に平たい顔がテーマになっているように感じる。

それに気付いたのか、奥は両目の距離がある可愛い芸能人を挙げるので、なんだか笑えた。

結衣が反応したのは、ハッキリと変なメイクをしていると教えてくれた部分で、

決して腹を立てたからではない。


オンナノコらしい奥はヨイショ発言しかしないのだろうと勝手に壁を作っていたせいで、

少し嬉しくなってしまった。


「ポイント、涙袋に肌色よりのピンクのアイシャドウ。これ凄いから。

これしたら下にアイラインとかマスカラなくても、デカ目になるから!」

へえ、と聞き流すのはやめた。
一生懸命魅力を引き出してくれる奥の瞳がとても真摯だったからだ。