揺らぐ幻影


憧れの人のビューティ演説なので、結衣は前傾姿勢で積極的に聞いた。

授業態度もこれくらい真面目なら先生もさぞかし喜ぶだろうが、

女子高生はそうといかない。


「目はパっと見薄く〜だよ。メイクしてないのに目大きいって騙してこそ。

濃いメイクもアリなんだけどね、TPO。至近距離だとお化粧詳しくない人からしたらあんまイメージ良くないし。

うちら世代はアリでもさ男子とかナシな人居るし、女子も大人も頭古い人のウケ良くありたいでしょ?」

真剣に耳を傾けていたはずが、既に半分は気が逸れはじめていた。

というのも、語尾さえオシャレアイテムにするのがモテ子なのか、

奥の喋り方は大変女の子らしく、結衣には絶対に無理な口調だったせいだ。

似合うと似合わないはファッション以外にもあるのかと思えば、なんだか気が重い。



「でね、結衣ちゃん付けまつ毛やめよ。黒で囲ったら逆に小さく見えるよ。せっかく元は大きいのに。とにかく素メイクだよ?」


奥の目はふしあななのだろうか。
素顔のマヌケ面には黒々しい目でナンボだ。

  不安なんですけど

薄いお化粧が合うはずがないので微妙に怖いし信用ならないが、

彼女のセンスの良さなら よく知っているため、とりあえず身を委ねることにした。


コロンとは違う甘ったるいお香の薫りが皮膚をなぞる。

天井に弛ませて飾ってあるタペストリーが、小粋に異国な雰囲気を醸し出している。

部屋の印象は服や髪型、お化粧のように性格が伝わる。

ちなみに、結衣の部屋は水色でシンプルに見せたくて、でも本当は可愛い子ぶりたいから雑貨は可憐だ。


他人に触られる顔はすそすそしてくすぐったい。つい唇が弛緩してしまう。

奥の手を信じたなら、姉にダメ出しされた全ては修正されるのだろうか。


可愛くなりたい。
綺麗になりたい。
好きになってもらいたい。
彼女になりたい。
付き合いたい。

恋を外見に結びつけることは愚かなのか。
幼稚でくだらないことをまた行っているのか。

けれど、外見を変身させると心が進化するような予感がする。


魔法がある、眠り姫だって歌声や美貌を贈られた。

間違いではないと信じたい。
そして、頑張りたい。