今頃、一般的な高校生は席に着いて黒板とノートの罠に嵌まっているところをサボると、
罪悪感よりワクワク感が増すなんて、不謹慎と呆れられるのだろうか。
ビーズクッションのようなもたもたした座椅子に腰掛けている結衣の顔は、
E組一の美女にじっくりと診断されていた。
至近距離でメイクを見られると、鼻の毛穴や産毛の処理、Tゾーンのテカりや口角の弛みなどが気になり、
非常に照れ臭いのは同性相手だからこそかもしれない。
黙ったまま観察をしていた奥が評価を発表した。
「ファンデ要らない。リップは良いとして、目と巻き方変えたほーが良いかな?」
テキパキとチェックする彼女の太い眉やアイラインが見えないのに大きな瞳、
技が光ると結衣は感服し、
アイブロウが上手な人が本物だと改めて思った。
セルフメイクを落とせばいよいよ改善が始まる。
不安を読み取ったのか、「もっと可愛くなるだけ」と唱えてくれる唇は、色っぽいベージュの綺麗な膨らみだ。
十年前くらいだろうか、やたらヌーディーリップが流行り、今や秋にはすっかりと定着している。
保湿してからファンデーションで赤みを消し、ベージュの口紅を塗って仕上げにグロスを……しかし何故だろう。
肌色のルージュは縦ジワが目立つし、ご飯を食べるとすぐハゲるし、
揚句、唇の皮が剥けるし、ムラになるしで、
気をつけていても汚い見た目になるため、ベージュカラーは難易度が高いのに、
それを難無く塗っている奥は、やはり結衣的にクラスメートのカリスマだった。
ギャルやイケメンと同様に、カリスマと言う単語も一時期死語で、
仲間内で風刺する時にスラングとして使用していたが、
また定番化するサイクルが謎だ。
そんな尊い奥に、「目おっきくしたい、やっぱ女の子は髪くるくるかなって」と、
美容院に行った時にお任せでと言えない質だから、一応自分の理想を告げておく。
すっぴんになった結衣はとにかく目が弱い。
全体的に素朴な印象、ダイレクに表現するトなら幸薄のっぺり顔だ。
お泊りとかハードル高いよ
まだまだ先の付き合ってからの不安を持つあたり、
少女は天然とか無垢とかではないことが伝わる。



