揺らぐ幻影


素直にカミングアウトをしよう。

センスがあるとは言えないけれど、本当は自分を特別ダサいと思ったことがあったとは言えない。


なぜなら、街中をうろうろすれば自然と美的感覚が身についたつもりだったからだ。

ショップ店員さんを崇拝してコーディネート術をチェックしたり、

地下街ファッション通りにある飲食店のガラス窓前の席に座り、私服オシャレガールのアレンジ幅の観察をした。


街中イコール上級者だと思っていたけれど、よく考えたら電車やバス、

コンビニやスーパー、レンタルビデオ屋さん、近所の道路でもどこにでも魅力的な人は居て、

周りを見渡せば、意識しなくても普通の生活で自然とファッションのニュアンスが養われたはずで、

因果関係は不明だけれど、なんとなく高校生になると雑誌は買わなくなっていた。


立ち読みはするが、中学生の時のようにガッツリ参考にしたいという発想が薄れ、

感性の磨き方にこだわらなくなっていた。



余談だが、卒業文集のセンスが良い人一位だったし、私服が可愛い人一位だったし、

この手のランキングは“なんとなく”の直感なので信憑性は皆無でも、

データでは分析不可能な教室社会における雰囲気について実は的を得た結果であり、

己を知るツールにもなる不思議な番付で、

何よりちょっぴりルックスには自信があった結衣だ。


オシャレは楽しかった。
彼女のような価値観の女子高生は同級生の子たちの真似をするのは苦手なようだ。

例えばクラスのあの子――メイクの方法が可愛いと思っても、それを参考にすればパクリガールと呼ばれるし、

髪型にインスパイアを受けようが、応用すれば模写女と陰口を叩かれるし、

プリクラで見たコーディネートが気に入って、乱用すれば盗っ人とレッテルを貼られる。

要するにお勉強なら身近な人を頼りにすれば良いのだけれど、オシャレではタブー、

相手の気分を害してしまう。


そもそも生活範囲が同じ子とは被りたくないし、自分が良いと思うものを選んできた。


そうやって生きてきた中で、ごくごく普通にオシャレを楽しんできたのだから、

姉に全否定された意味が今だに分からない。