「普通生理的にムリなら食べないよね?! 三角コーナーさよなら、だよね!?」
小刻みに震える少女の声は、聞いている方が恥ずかしくなる。
手作り品をプレゼントするにあたって一番恐れていた事柄は、
嬉しい嬉しくない以前に、気持ち悪いと思われるのではないかということだ。
大人たちには可愛らしい心配に見えるのだろうが、世界中の女の子が不安になる訳で、
だからこそ、好きな人に口へ入れることを許されていた事実は救いだった。
「普通イヤならねーよって捨てるから」
「ほんまそれ! 引いたら食べるん無理」
二人が過度に笑うので、「嫌われてないよね!!」と、結衣も自然と前向きな笑顔になれる。
良かった
食べてくれたんだ
昔、姉に根拠が謎なピュア女子が好む話をよく聞かされたのだけれど、
人は無意識のうちに目の前の人と同じ動作をとるらしい。
例えば髪を弄ったり腕を組んだり、模写するんだとか。
そう、相手が笑っているのなら、生理現象として自分も真似て笑みを作るらしい。
そう、笑ってくれる二人が居ると嫌な日があっても、綺麗に口角が持ち上がる魔法。
脱力気味に、わざとらしく頑張れと言う愛美と里緒菜が好きだ。
適当に応援してくれる感じがカジュアルで、なんとなくこちらの気が楽になれる。
一人で頑張ろうと決心するより、軽口を叩いて雑に背中を押される方が遥かに積極的に変われるのが結衣だ。
好きになってもらえますよーに
甘い夢物語のままではなく、正夢にすると自身に言い聞かせる。
バレンタイン。
真っ直ぐに伸びた廊下、目を瞑って歩いたらどこに辿り着けるのだろう。
出来ることなら、好きな人に手を取ってもらいたい。
名前を呼んでほしくて、今も残像に酔う。
窓から入るお日様によるものなのか、蛍光灯の明かりなのか、ここは煌めきが相応しい。
お昼寝をする赤ちゃんと母親の様子を絵に描くなら、
穏やかな陽射しをアイボリー色でふんわりと塗ってみたい。
落ち着く色素、家庭訪問の時期の太陽が似合う人。
丸口金でバタークリームを絞ってみれば、きちんと直線に引けるのだろうか。
そんなメルヘンなことが頭の中に浮かんだ。



