揺らぐ幻影


「スレンダー愛美さん、恋したら教えて?」

粗く茶化すことが結衣に生まれた運命なら、

下まつ毛が伸びる分だけ、以前よりも上質な仲になれた気がした。


通常、この手の女子高生サクセスストーリーならば、今回のような出来事が大事件となり、

二対一に分裂したり、持ち物に古典的な嫌がらせをしたりなど、

ドン引き陰湿ヒステリック仲間割れ展開が待ち構えているのだろうが、


あいにく一般人には読者をハラハラさせるような人格亀裂要素は含まれず、

現代を生きる彼女らに似合うのは、なまぬる〜いゆる〜い友情だった。


実はガッツリ信頼関係を築いている点は、安易に語らない方が粋なので内密にしよう。



一秒前よりカワイイ笑顔。
しっかりと自分に向き合えるから、女の子は鏡を見て身支度を調えるのだろう。

一筋に結ばれた本物の目と虚像の目、そこに差がないならば、

綺麗になぞれたならば意欲に繋がる。


教科書に載る文字を理解するだけが学校に通う目的にはならないし、

椅子に座るだけが優良な生徒ではない。



祖父母がお盆に来る孫を待ち望むくらい尊い行為に値するに唯一の娯楽となる体育、

今日は総会か何かで担当教師がお休みのため近藤はお預けとなり、

結衣にとっては、渋滞で孫が来るのが一日遅れたくらい残念でしかなかった。


「美味しー」
「蕩ける」

お昼のデザートとして、友人らに昨夜作ったフォンダンショコラを振る舞った。

カップケーキの型に膨らんだ手の平サイズの甘い甘いチョコレートケーキ。

かじると表面はサクサク、中身はふわふわ、中心はとろとろ、

色んな食感が味わえる贅沢なお菓子だと結衣は位置付けている。


「本当はチンしたら絶品だから」

褒められると嬉しくて、自作品にも関わらず得意げに舌鼓を打つ調子の良さが、

彼女の脳天気さの象徴でもある。


  出来たてはトロットロなのにな

焼きたてはチョコレートフォンデュが中に入っているみたいで、

冷めると生チョコが埋まっているみたいに変わり、

フォンダンショコラは二度楽しめる味わいなのだが、やはり温かい方が人気だと思う。


「おーつかくん! レンジで十秒あっためて!」