揺らぐ幻影


すなわち、今しなければならないことは、

やはりホワイトデーまでに近藤と両思いになることだけだ。

一生懸命に毎日を頑張れば、

それが愛美が望んだことで、里緒菜が尊重したことに繋がる訳だ。


ラベンダーの芳香剤、水気を切る乾燥機、優遇された進学コースのお化粧室。


クッションとして鏡を通すため、本音を出しやすいのだろうか。

愛美と里緒菜を二秒ずつ見た後、

結衣は新調した三段レースでポイントにリボンがついたメイクポーチにくちばしクリップを片付けた。


お化粧道具一つで内面だって分かる。

チークブラシに蓋をしなくても平気な人やマスカラの繊維が絡まったままでOKな子、

アイシャドーの粉を中でぶちまけたままでも問題ない奴、色んなタイプがいる。

そして、アイブロウは面倒なので出先ではアイシャドーで済ますのがお気に入りな女の子が結衣だ。


愛美の手はいつも綺麗。
里緒菜の髪はいつも綺麗。

二人は尊敬できる存在だという感謝を、秘密主義な結衣が語らないせいで伝わりやしないのだけれど。



近藤は知らない。

たかが片思いに、友情裏事情があったことを。

だから恋愛は二人だけのものではなく、たくさんの皆と関わった上に成り立っていて、

だから大切にしなくちゃならない。


だからだからだから、だ。


一秒でときめけば、一分で凹み、一時間でにやける。
一日経てば知らない自分がここに居る。

好きな人が見ている結衣という人間は、昨日とは違うのだから毎日近藤に恋してもらいたい。


毎朝、最大限可愛くあるように、だからネガティブになったらだめだ。

ほら、『だから』だ。

だから好きな人に毎日何かを印象付ける人でありたいのだ。

彼女の一秒が一大事なように、彼の一秒がどう転機するか分からない。

もしかしたら、好きになってくれるかもしれないと期待しよう。


  頑張る

  頑張ろ、

  ……ごめんね

もう謝罪は口にしない。
一回に気持ちを込めたらいい。

多分、きっと、根拠はないが女子高生、適当な迷信・矛盾する持論を掲げてナンボだ。

とにかく積極的に頑張ろうと、ナルシストな結衣は鏡に向かって口角を上げてみた。