わかっている。
それもこれも片思いでキャパシティの少ない結衣を気遣かってくれたからだと、
二人なりの優しさだと、分かっている。
恐らく事情を知っていたなら、あれこれ気を取られ彼女はバレンタインにチョコなんて渡せなかっただろう。
そう、二人は友人のことを理解しているからこそ、最適な行動をとった結果が、――今なのだ。
すなわち、結衣は愛美と里緒菜に感謝するべきである。
しかし、切なくてたまらない。
恋愛は女子高生にとって重要で、その一大事を知らされない己の未熟さが憎たらしく、涙が零れた。
ぽろぽろと静かにシーツに溶ける。
肺を潰されたみたいに痛くて、眼球が熱くて、苦しくて気持ち悪い。
最後の三つ目。
これが一番の涙の原因だ。
三つ目は、愛美を無意識のうちに傷付けていたこと。
どれだけ無神経な発言で彼女の傷口に塩を塗ってしまったのだろうか。
彼氏が居て羨ましいと言ってみたり、渡す相手の居ないバレンタインのケーキ作りに付き合わせてみたり、
きっと胸を痛め泣いていたに違いない。
今、結衣が流している涙よりも遥かに質のある雫だったのだろう。
何も知らずに羨ましい羨ましいと褒められ、さぞプレッシャーを感じていたことだろう。
いいや、甘い。
愛美は結衣が憎たらしくなかったのだろうか。
欝陶しくなかったのだろうか。
……知らないからってめちゃくちゃひどいこと言ってる
うざいよ私、本気
本当に嫌だった。
こんなに自分を嫌いになったのは初めてで、どうしたらいいのか分からない。
それさえ生温いお子様の証拠ではないかと呆れてしまう。
こんなクズ人間な分際で、近藤に告白をしたなんて恥ずかしい。
どす黒い感情の原因が自分自身だなんて救いようがないレベルに憐れだ。
友人らに悪かったと反省したところで何になるのだろう、許される前提の愚かな自己満足だ。
シーツを掴むと、指の隙間に皺が集まる。
引き裂いてしまえたらどんなに楽だろう。
物に当たるのは楽、クソガキになるのは楽――中身が大人になりたい。
力強い夜風に揺れるベランダの窓の奥、今夜の月は雲に隠れている。



