揺らぐ幻影


「美味しー」
「タコ焼きってコーラ」
「分かるー」

「ピザも」
「分かるー」

「焼肉、ハンバーグも」
「絶対コーラ」

炭酸あるあるに笑う。
この手の話はなぜ盛り上がるのだろうか。

初対面の時でも、まるで数年のよしみがあるような勢いで共感し意気投合し、打ち解けやすい。

だとすれば、近藤とお喋りをする時に持ってこいだと結衣は頭にインプットした。


中身のない実のない話だと聡明な方には馬鹿にされるかもしれないが、

どういうくだらなさを口にするかで、人の内側に触れられる気がするのは、思い違いなのだろうか。

どんな小話を選択するかで、その人の思考の嗜好がなんとなく感じ取れる気がする結衣だ。


白い湯気が立ち、こってりとしたソースの香りに食欲を誘われ、

なんだかんだダイエットが形だけなのは秘密だ。


「私浪費家? 今年なってパンプス四つ目、んで履いてねー」

「お蔵入りですね」
「衝動買いが不況を救うんだよ」

業務命令なのか、とりあえず笑うと、

アルバイト先の出来事や家族の話をして、時々タコ焼きをつまむ。


どうして話しても話しても次々話題が浮かび、笑いが絶えないのだろうか。

三人で居るとあまり沈黙にならないし、無音になったらなったで爆笑するし、

とにかく自分の言葉で笑わせたくなるサービス精神旺盛な人種が、女子高生だ。


そんな身内だけが楽しい会話を繰り広げている結衣は、ふとあることを思い出し、

ドキドキして幸せになれるテーマを提供してみる。

「愛美ってば彼氏なんて? 美味しって?」

てっきり今日にでも近藤から美味しかったとかなんでも良いから、

バレンタインの感想メールがくると思ったのだけれど、

それは甘い期待で、彼からは音沙汰なし。


やはり彼氏彼女の関係でないと厳しいと痛感した。

その点、愛美はバレンタインにワンホールケーキを彼氏と一緒に仲良く嬉しく食べたのだろう。

羨ましくてウキウキした。

  早く愛美みたいになりたい

  記念日とか良いな


そう、ガールズトークは恋が主役。
お金やメイク、どんなネタでも最後は恋愛に絡められて語られるもので、

何時間でも熱弁できる不思議。