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《今日ありがと。頑張ります》
リビングからさらったクッションを敷き詰め、埋もれるようにしてベッドに寝転ぶ少女が送ったメールは、
十代らしからぬ簡素なものだった。
送信先は告白相手。
全く小悪魔なテクニックは絡められていないが、
やっと恋愛絡みの事柄が伝えられるように進化しただけ、素晴らしいと過大評価しよう。
《全然。ありがと》
返事が難しい内容なので、《じゃあ学校でね》と送った。
だから何故――?
《はい。月曜に笑》
どうして返信をしてくれるのか。
終わりと見せかけて、向こうがこう出てくると期待したくなってしまう。
近藤が好き。携帯電話をそっと充電器に繋いだ。
時計の針は左に集まる九時四十五分、バレンタインが後二時間で終わる。
さあ、ここからが本番だ。
告白が嫌だったら今だってメールの返事はないはずだ。
本当に迷惑なら、もう期間を無視して現場で振られていたはずだ。
そうやって片思いの筋道を通せば力が漲る仕組みだ。
大丈夫
告白をした日は、本来ハイテンションだろうに、
マーケティング班の如く、現状を分析をする自分が居て、
案外冷静沈着な性分なのだろうかと結衣は思うくらいだった。
そのせいか奥のメールに嫉妬もなかった。
彼女はチョコあげたら好きと言う前に 逆に告白をされたらしい。
素直に羨ましくて、最高のシチュエーションに良いなと憧れた。
《おめでとおお!!鼻血に気をつけて》と、いつもの調子で馬鹿みたいに送れた。
片思いが実ると、それはどんな味がするのだろうか。
イチゴのように甘酸っぱいのか、はちみつのように甘ったるいのか、
レモンのように酸っぱいのか、あるいはミントのように刺激的なのか。
どうせなら、チョコレートのようにとろけてしまいたい。
しかしながら、今の結衣がそれを知るのはまだまだ先になりそうだと勿体振ってみよう。
ウサギのお財布をポッケから出し、チェストの上に置いた。
その隣に咲き誇るのはふわふわとした恋の花。
今日が終わる、明日が始まる。
この恋の花言葉は何か、彼の音で優しく説いてほしい。
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