休日に呼び出した。
待ち合わせ場所に来てくれた。
目を見た、話した、声を聞いた。
チョコを渡した。
告白をした。
好きだと言った。
ホワイトデーの約束をした。
また好きになった。
思わず目を瞑る突発的なビル風は、木葉を巻き上げ吹き荒れる。
風があるから、昨日が洗いざらいなくなるのだと思う。
明日を見なさいと強制的に太陽を動かしているのだと思う。
彼女になりたい。
恋人になりたい。
付き合いたい。
好きだと言われたい。
彼女にしたいと思われたい。
恋人になりたいと思われたい。
付き合いたいと思われたい。
好きになるばかりだ。
ホワイトデーまでに自分と同じ分だけ、片思いをしてほしいと願うのは我が儘なのだろうか。
手頃だからとOKされるのは嫌だ。
本命ができるまでの繋ぎに扱われるのは嫌だ。
からだ目的のキープは嫌だ。
だからホワイトデーまで精一杯頑張りたい。
馬鹿みたいに好きだと思われる人になりたい。
里緒菜と愛美を見た瞬間腰の骨が砕けたのか、
たちまち入口のマットの上にしゃがみ込んでしまった結衣だ。
……なんか
嘘みたい、夢、?
ついさっきがあやふやで、第三者として映像が頭の中を巡る。
やたらバレンタインと言う単語を喚いていたような気がするが、それさえよく思い出せない。
夢を見ていたような手応えのなさだ。
体調が優れないのかと店員さんが駆け足で近寄って来たけれど、
さすがに『恋の病です』とは言えず、足をくじいたとごまかした。
煎れたてのコーヒーの薫りはきつく、鼻の付け根に充満する。
店内の明かりは落としてあり、レジは列を作っているが喧騒はなく物静かで知的な雰囲気だ。
黒や茶、重厚感ある色合いで統一された内装に、白いコートは浮いている。
ソファー席には 中年のサラリーマンが一組向かい合ってどっぷりと座っている。
約束通りスタンバイしていてくれた友人に、
「二人ともー」と鳴いた。
「「……結衣」ぴょん」
自称親友らの想いは一つ。
振られたのか振られていないのか。
しかし聞かなくとも悲壮感漂う少女に前者だろうと大方予想がついた訳だ。



