近藤の住まいと結衣の自宅の中間点の駅は、程よく都会だ。
少し寂れた駅前大型スーパー、太陽で剥げた看板、地域問わず目にする電気チェーン店、
でこぼこした建物たちが、空の切り取り線だ。
車に反射した日光がキラキラと輝いていて、まるで夏の太陽を見上げる気分になる。
大丈夫
心配を音にすると余計に不安になりそうなので、結衣は黙って友人を見つめた。
目は口ほどに物を言う、果たして本当にそうなのだろうか。
「上手くいってデートなら、うちらほったかして良いからね、コーヒー嗜んで気ままに帰るから」
そう里緒菜が告げると、今度は愛美が続ける。
「デートなら満喫しなね、うちら暇人はお喋りするから」
この日のためにつきっきりの二人は、無条件で抱きしめてくれる母のような存在だと、
女子高生らしく過大評価しよう。
「ありがと、神様」
ヒーリングCDにある川のせせらぎ音ばりの聞き逃してしまいそうな声量だった。
せっかくの晴れ舞台に弱々しい笑みは似合わない。
「もう結衣、頑張って! 今日可愛いって、スカウトされるって、デビュー作がいきなり主演だから」
「ほんまそれ、今この駅に居る人間の中で一番美女って設定だから! とにかく頑張れ」
ほら、笑いの沸点が低いと三人の顔はそっくりに崩れる慶び。
平和の象徴、鳩に餌をやるお年寄り。
瞳を閉じると、大好きな人の顔がはっきりと浮かぶなら大丈夫だ。
……すき。
いつまでも巣立てない訳にはいかない。不格好でも自分の両手で飛ばなくてはならない。
「ラブラブ」と繰り返す二人に、「死語じゃん」と結衣はいつも通りツッこめていた。
彼女が笑った瞬間、里緒菜と愛美が唇の端を吊り上げたのが分かった。
ああ、……そういう
ガッチガチに固まった筋肉を緩ませ、心の中で二人の友人にお礼を言う。
なぜなら、本日の主役を和ませてようと死語を連発してくれていたのだと気付いたせいだ。
『大丈夫だよ』、『うまくいくよ』みたいにガッツリ励ましやしない。
分かり辛い変化球の優しさは結衣にとっては居心地が良い。
カジュアルに感謝できる安っぽい感じが、自分を奮い立たせるには事足りる訳だ。



