揺らぐ幻影


この恋は可愛い子ぶって、お菓子にあやかりたい。

キラキラデコレーションのキュートさも、口の中で広がる味も、お姫様みたいな幸せが詰まっている。

甘いだけではなく頭も使うし、体力もいるし、

繊細で一つ狂うとたちまち残念な結果になることもある。

何より食べ過ぎたら太るし、何事にも適量ってもんがあって、

大人になると、子供の時のように夢中で食べられない。

カロリーや原産地、糖分や脂質ばかり気にして、

肩書や学歴、容姿や財産ばかりを計算して、

甘いだけが恋ではなくなってしまい、お姫様は魔女になる。


心を白にして、恋に出会いたい。



つまり、

「じゃあ健闘を祈るからね?」
「うちらコーヒー屋居るから」

結衣には愛美と里緒菜が必要だ。

二人がいつだって術をかけてくれる。


いざ待ち合わせ場所付近に来ると、走ってもないのに膝が笑い出す。

身体が小刻みに震えるのは寒さではない、むしろ皮膚の内側は熱いくらいだ。

緊張するなんて、幼稚園のお遊戯発表会以来かもしれない。

あの時は先生を見たら自然と心はほぐされたが、恋の先生二人を見ても今回は緊張が治まらない。



「吐きそ」

  気持ち悪、朝食べてないから……?

  味見かな、

真っ青な顔をした少女の頬は、

湯上がりを意識していたのに、かえって桃色のチークが人工的で浮いていた。


「大丈夫、この愛美サマがスタンバイしてるから」

「ほんまそれ、あの里緒菜サマが居るんだし。生存者アリだって」

「……うん」

結衣は二文字を返すのが精一杯、頭の中はからっぽで、あんまり現実味がなかった。


さすが土曜の昼間は、駅構内なだけあって人口密度が高い。

このまま人の波に流されて現実から逃げたくもなる。


白と黒の反対色は人目を引くのか、通行人とやたら目線が合う気がするけれど、

初めての恋愛絡みのイベントに戸惑っている彼女の思い過ごしだろう。


  怖、

  なんか……リアル

  、やだ

ネガティブ選手権があったら、断トツでトップに踊り出るに違いない。

好きな人に会うのが怖いのは好きだからの矛盾具合が、微妙な気がした。