頭のてっぺんから行こう。
いつもより逆毛を立てたので、たっぷりとトップが膨らみ、
不必要にくるんくるんと螺旋状に巻かれている髪の毛、
お化粧もバッチリで、お姫様のような付けまつ毛は昨日慣らしたおろしたての二千円近くもしたもので、
真珠の光沢を思わせるぷっくりとしたグロスは三回重ね、鼻をくすぐる豊満な香水もつけた。
そして初私服披露となるため、ファッションは結衣なりに最大限頑張った。
真っ白のコートはお人形さんAラインで、折り返しの襟が顎のあたりまであり、
すとんとワンピースを着ているようなシルエットが萌える。
消耗品で三千二百円も費やしたタイツは真っ黒に見えるも、
光の加減で細いストライプが透けて見えるので色っぽい。
そして去年スペアで二つ買いした黒いブーティーを選んだ。
待ち合わせをしてぼんやりしている時に、あの子の足ブーティー似合うと他人に噂をされたため、
第三者の意見は信憑性があるだろうと、精一杯マシになる格好をしていた。
深い海底に似たコバルトブルーのバックはリボン型で、パーティーに行くような微笑ましい大きさだ。
いかにも女の子らしいコーディネート、仕上げに紙袋と来たら明らかにバレンタイン仕様である。
意味ありげに三回頷く姉は逆光で、正直あまり顔付きが分からない。
しかし、いつものように意地悪な表情をしているに違いない。
嫌な勘は当たるものなのか、
「孕まないでねー」
年上の彼女が揶揄めいた笑みを浮かべるのがはっきりと見えた。
なぜか姉は夜遊びやら携帯電話やら社会風刺の類いを結衣に厳しく注意勧告をする。
斜め上をいく発言は確かに参考になるけれど、それとこれとは話が違う。
聞き捨てならないことを言った。
「遊ばれないようにね」
……――は、?
さすがに近藤はそんな人ではない――誤解をされることが嫌で、
もちろん結衣は昼間から叫ぶことになるものだから、
結局、恋をしていることを自ら主張する嵌めになったのだった。
この片思いが行き着く先、どうか明るい世界でありますように。
懸命に祈る少女は、見送る姉がどのような瞳を向けていたかなど知らない。



