揺らぐ幻影

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タイプではなくても、ストライクゾーンではなくても、

自力で惚れさせたいと思えるうちは頑張りたい。

昨日は泣いた心が、今日は緊張で震えている。
片思いはなんて忙しいのか。


カーテンの隙間を覗くと、夜空に浮かぶ飛行機が流れ星となってくれる。

ピカピカ点滅するお星様に願うことは決まっていた。

好きになった瞬間から決まってしまっている。


「どおっしよ、漏らしそうだよ」

『えー? おそそー』

「あー笑えません」

二十四時間ぶりに子機を握りしめるのは、焦げ茶色の髪が胸下まで伸びた少女だ。


しっかりとケアされている証拠に毛先までしとやかに湿っている。

シャンプーやコンディショナーは、なぜ新品だと使いはじめ三回目まではひどく髪に効果が見られるのだろうか。

どんなにチープな売り出し品でも、

三回目まではつるつるサラサラ縮毛矯正をした時のようになるのに、

髪が慣れるのか、成分は変わらないはずなのに四回目からは浸透を感じなくなる不思議。

これは、よくガールズトークで語られる無意味な日常ビューティー話だ。


  緊張する

人と言う字を手の平に書くなんて、小ニの長縄跳び以来である。

ここまで来れば神頼みだった。


今、結衣の心臓は告白級に狂っている。

いや、あるいは告白と言っても過言ではないのかもしれない。

寝癖のようにゆるくウェーブがかった赤みのある暗めの髪、少し白い肌、細い顎、薄い唇、

筋肉質過ぎない華奢なスタイルが好き。

近藤を思えば、脈を打ちすぎて皮膚から血管が飛び出してきそうだ。


壁にかけられたレモンイエローの花束で、将来は生花を飾るゆとりのある女性になりたい結衣だ。

早起きをして水やりをしたり、虫の予防をしたり、今の自分は二週間もしたら面倒で枯らす自信しかない。

手入れの要らないタイプでさえ、埃を被せてしまいそうだ。


好きだ。近藤が好きだ。
男子と女子はどうしてややこしいのか。

女友達には『あたしと親友になってください』なんて言わないのに、

男の子相手には、どうして宣言が必要なのだろうか。


夏休み明けの体育ばりに、激しい動悸がするのは何故。