揺らぐ幻影


馴れ合いやお世辞は度が過ぎるとわざとらしく失礼で、

そんなご機嫌取りの違和感満載女子力高い友情はごめんだ。


ウケ狙いの『結衣ちゃん可愛いよね〜』はアリだけれど、

『結衣ちゃん本当に可愛いッ!』みたいな笑いにならないガチ感がある褒め合いは苦手な結衣だ。


頼もしい里緒菜に、では自分はどうしたらいいのかと尋ねようとした時、

甘いメロディーが鳴る。


もちろん、それは近藤しか歌うはずがない。


「返事っ!! えっと、目の回り白かったハテナ笑い、だって、日サロ通いのフレーズ懐かしいな、 だって」

少しハスキーな声の里緒菜は、大袈裟に相槌を打ってくれて、

『大丈夫じゃん、返事きてー!!結衣まあまあ可愛いから。もしギャルが好きにしろ、無理めな子にはメールしないでしょ』と、

フォローの言葉を並べてから、一息つくと、

『てか私か愛美が好きならとっくに結衣アド聞かれてるよ?

タイプでもないし嫌いなんなら結衣なんかとメールしないでしょ』と、続けた。


「……。」

  そっか……

一見、マニュアルをなぞったような結衣が苦手とするオンナノコな激励に思えるが、

結衣なんかという蔑んだ発言に説得力があり、涙は消えていた。

この手荒さが好きだ。


  狙ってるなら私とっくに利用されてるよね

  ……。そうだよね

勝手にはやとちりな妄想が入り悲しくなる茶番、お花畑の世界は楽しいだけではないのだと実感した。


「ありがと、頑張る。ごめん泣いて、涙君にサヨナラしなきゃですね」

なぜ泣いたのか、ついさっきの自分のことだが、到底理解出来やしない。

今やもう冗談だって言えるのに。


『今度シェイク奢ってね』
「仰せのままに」

冷めた目頭を拭い、七回瞬きをして悲劇のヒロイン純愛ガールを追い出した。


近藤とのメールは増える一方だ。
うまくいけば、ありのままの自分を好きになれるだろう。


子供の頃、寝れない時は母親に背中をトントン叩いてもらえると自然に眠れた。

今は好きな人とのメールのやりとりを眺めると、いつの間にか眠りに就ける。

規則正しい秒針と寝息が歌う夜は、静かに更けていった。


…‥