揺らぐ幻影


泣き止みそうにもないと察知したのか、電話の向こうから話しが始まった。


『普通にさ、結衣の友達がギャルなのにギャル良くないーなんて普通言わないでしょ。普通。

それでギャル痛いよなとかほざいたら失礼過ぎるくね? 彼は社会人スキルあるだけ。

てかギャルについて聞かれたって返信しようがないし。てかあんたのメールの仕方が普通に悪いって』


泣いている女の子に、『大丈夫だよ』オンリーではない辺り、真に里緒菜らしい。

諭すのがお好きな友情語り電話よりも、伝わり易いと思う。


里緒菜も愛美もギャルではなく、ただのカブレでショボいキャラ、

ギャルではないから例え近藤のタイプがギャルにしろ、全く心配ないと言われた。

更に本物のギャルは服コの子たちだけだと念をおされた。


ギャルという単語が何回出たか数えたら、正の字は六個以上だったかもしれない。


『昔ってヤマンバ流行ったよね、お姉ちゃんマンバギャルだったよとか適当に打ちなよ。

泣いたらその薄い二重の線なくなるよ? 平安時代になるよ結衣』

「ぶははっ、笑わさないでってば、あはっ、二重、アイプチ違うし失礼な。ふ、デンボ」

泣き止まさずに泣かせたまま笑わせる友人に感謝して、

指示のままをとりあえず結衣は送った。


  優しい、な……

あと何回友人に感謝して生きていくのだろうか。

あと何回言葉で涙を拭ってくれるのだろうか。

泣くのは嫌だけれど、なんだか幸せな未来だと想像できる。

すると自然に唇には笑みが浮かび――やはり安価な親友による計算の気がした。


ゆっくり深呼吸をして自分を見つめ直す。

意味不明に嘆いている場合ではない。


タイプとかタイプではないとか関係なく、単純に彼に好かれる女の子になれば良いだけではないか。


雫がまつ毛に残っていたせいか、イミテーションのシャンデリアがキラキラ輝いたような気がした。

ほら、涙は幻を見せてくれるから、たまには泣けばいい。


「私ギャルになろうかな」と、結衣は結衣なりに考えた名案を口にしたのだが、

あっさり『似合わん、おっとり顔だから』と、却下された。


ダメなもんはダメと言う。
それが偶然奇遇作戦のシビアなルールだ。