揺らぐ幻影


ケータイ世代は指が意志を持つ。
十のボタンから選んだ文字は呪いの言葉。


《ギャルの子どう思う?》

気付いたら意味不明な受信者も困るメールを結衣は打っていた。


そして、彼からの答えに、地理・歴史の空欄埋め用キーワードを見てもピンとこなかった時くらいに、頭が働かなかった。

《明るくてよろしい。小崎さんとか友達ギャルじゃん》


彼の真意は何か。

問いと解答が一致してしまい、もやもやと焦る気持ちが生まれた。

キラキラした明るい月が隠れているように、結衣の胸はたちまち黒に染まり、苦しい。


  ……なんで?

もしかしなくとも、近藤の好きなタイプに彼女は全く当て嵌まっていやしないのではないだろうか。

どうやら彼はギャルがお好きなようで。


ギャルファッション。
疎い人には一括りにされがちだが、実際は系統の中にも種類があると、女子界で言われている。

たとえばセクシー路線、無邪気狙い、大人推し、派手売りなど、

様々だが、結衣はそこに属していない。

っぽいショップで服は買うも、コーディネートで甘め清楚に変えるため、やはりギャルには被らないのだ。


従って、これは異性応用問題だ。
恋愛経験がなくとも導き出せる答えは一つ。

結衣が好きな人は、自分の友人のどちらかがストライクゾーンだからこそ、

今までつまらないメールに付き合ってくれただけではないのだろうか――という解答。

結衣にはお情けだと考えたら、全てがしっくりした。


  待って待って

  里緒菜か愛美が、目当て?

  、やだ

おもむろにフェイスパックを外すと、なぜか顔面が干からびている。

潤すはずの肌が乾燥して、皮膚が引き攣るのは何故。

綺麗になりたくて美容に手を出したのに、ルールを守らないから荒れるのだ。

長時間パックをすると逆に負担がかかる、そんな当たり前なことを今知った。


痛かった
慌てて乳液を叩くも手遅れな気がして、全てに舌打ちしたくなる。


近藤の理想の彼女像に掠っていやしない顔が大嫌いだ。



意味なくベッドの上に正座をし、焦りを飲み込んだ結衣は直ぐさま子機を取った。

助けを求めて恋のヒャクトウバンへ未来を縋ってみる。