揺らぐ幻影


「愛美ってば彼氏居る癖に欲張りー。里緒菜、うちらモテ子じゃないもんね」

結衣は故意に変な顔を作って里緒菜に同意を求めた。

この同族ウチラ発言は卑下した内容の場合、本当に仲が良くないと、

『お前と一緒にするんじゃない』と反感を買いやすいので、要注意なのだが、

その点、彼女たち三人は童謡もびっくりななかよしこよしぶりなので問題ない。


むしろ、

「あはは、私のが結衣より美女だから。あんた何がなんでもぽこりんじゃん」と、

笑いに繋がる前フリとなる。


同じ波長で愉快な気持ちになれる人と出会えることは、稀なので結衣は大事にしたい。


ごみ箱と化したレジ袋に、二つ目のおにぎりの包み紙を入れ、

趣味がガールズトークでもある彼女は、笑いを我慢しながらお喋りをやめない。


「そんでセレブにケーキバイキング行って堪能、今度愛美も一緒――ってか痩せた?」


女子高生における痩せポイント、

横から見た時に膝のお皿が腿より浮き出ていることをクリアしている愛美を改めて見れば、

ただでさえ華奢な彼女は、なんだか一回り小さくなったように思う。

それに引き換え結衣ときたらダイエットと言いながら、

一昨日は糖分たっぷりのケーキをこともあろうが二十七個も食べたではないか。


意志が弱いなと自嘲し、エネルギーの塊であるおにぎりから手を離した。

  ひゃく はちじゅう きゅう

  カロリー……憎


教室には机の数だけ大小様々な悩みがある。

床のタイルに合わせ一列にきちんと並んでいるはずが、僅かにずれている。

気にならないのか、ベランダ側の窓には水滴の跡に土埃がついて薄汚い。



「田上さん細すぎるよーって?」
「太った方がいいよー田上さん」

それは、いつの日かの近藤によるメールの言葉で、二人によるテッパン揶揄だ。

「もおー」と怒ったふりをしながら、アハハと笑えば幸せなら、

笑顔が人間関係を円滑にするのかもしれないと大層なことを結衣は導く。

根拠はないが、八割方当たっているのではないだろうか。


どうしてかというと、単純に笑顔でいると『まあいっか』と、楽観的になれて、

悩みなんて食べてマズイと爆笑すれば前向きになる。