真っ直ぐな廊下に差し込む光はシャンデリアの輝きに似て見えたし、
友人の着ている制服が立派なシルクに思えたし、
低い天井取り払われ、夜空を眺められるバルコニーに変わったし、
――学校が舞踏会に変貌してしまっていた。
恋をしている人しか招待されない厳かな隠れ家には、心を許した相手しか存在しない。
「……とか、手始めに二名様に告白してみたり」
反応が見られないので、外したのかと結衣は取り繕い、おどけてみせた。
すると予想とは違い、みるみる里緒菜と愛美は笑顔になって――
白い歯を見せ歯茎さえ見せ、鼻に皺をつけ、特上の作り笑顔ではない最高な素の笑顔だ。
こんな表情をくれる友人なのだ。心の中からどろどろの黒がなくなった。
彼女たちが安易にばらしたりするはずがないじゃないか。
悪戯に噂を広める非情で素っ頓狂な意地悪女なんて、普通な自分の生活範囲には居るはずがない。
こんな時に、愛美と里緒菜、二人と仲良くなったきっかけを思い出していた。
――約九ヶ月前、それは入学式のこと。
女子高生になりたての結衣は携帯電話のマナー設定を誤り、着信音を式典で鳴り響かせてしまったのだ。
その音はマニアックな深夜バラエティー番組のコーナーの歌で、
分かる人にしか分からないソレを、『ウケ狙い?』と話し掛けられ、一気に仲良くなったのだから、
ありがちな自己紹介なんて必要なかった。
その一言が人物像のすべてを教えてくれた。
ゆるゆるな感じで始まった友人という関係は、ガッツリ友情よりもアッサリしている。
でも実は繋がりが強いならそれでいい。
真剣な感じはいらない、楽しいだけがいい。
それが結衣の高校ライフの主軸だ。
街中が似合う典型的な女子高生らしい行動が好きな点も類似しており、
放課後語りやがれという愛美の一声で、三人は今、駅前のファーストフードに居た。
カウンターではなくボックス席に、二対一で結衣が二人と向き合うように座っていた。
ざわついた店内は制服だらけ、学生が席の大半を占めカラフルな笑顔がガチャついた雑談を作り出す。
放課後――それは女子高生の本音が出る時間。
と、適当にもっともらしいコピーを飾ろう。