チョコレートに胡桃を合わせた人は策士だと思える程、あのマッチ感は病み付きになる。
パウンドケーキを焼く時は、とりあえず二つを混ぜれば失敗率はグッと低くなると勝手に結衣は決めている。
なんでもかんでも放り込むから、駅前はごちゃこちゃしている。
高さを揃えて外壁を統一して、そうしたら観光客が増えて経済だって……
といった彼女のような大規模な比喩をやたら口にするのが女子高生の傾向だ。
似た者同士の里緒菜が、受信メールの朗読を始めた。
「でも田上さん英語得意系ハテナ、かなり予習してたマル、辞書めっちゃ調べてた―――って結衣!!
やったじゃん!! これ辞書作戦のことじゃん!?」
「……、え?」
言葉の意味を理解するも、やはり結衣は信じられなかった。
母親がピーラーで林檎の皮を剥いていた時くらい驚いてしまった。
どれだけ前の出来事なのか。
電子辞書を借りた際の近藤の素っ気なさ、会話なんて成立しなくて、
目だってちゃんと合わなくて、
けれども彼はあの一瞬を覚えていてくれたらしい、いいや違う。
あの女が田上結衣だと分かっていたのだ。
「うそ、嘘、……え、ハハ、うそっ、だって、えへへ、嘘、なん、で? へへ」
嬉しいのを通り越えて脱力した結衣は、テーブルにおもいっきり伏せた。
神経がたって血が流れる感覚が不気味だ。
どうしよう、嬉しいんだけど
嬉しいっ嬉しい
嘘みたいだ
あんな作戦、冷静になれば意味がなかったと諦めていた。
そう、結衣だって一学期にD組の男子に読書の本を貸してあげたけれど、それが誰だったか曖昧だった。
だから、期待してみたくなる。
「調べただけ、全然。だって英検三級落ちたから笑いって打って?」
里緒菜に代筆してもらう間、結衣は緩む頬を何度も叩いた。
辞書を借りた作戦なんて彼の記憶にあったとしても、誰かに貸してやった程度だと凹んでいた。
それをメールをしている女子だと分かっていてくれたことが嬉しくて嬉しくて、
語彙が少ない結衣は、嬉しいと幸せ以外でこの気持ちをなんと言い表せば良いか浮かばない。
とにかく、片思いを頑張って良かった。



