私ってめっちゃ性格悪

  やだな

  なんか、嫌……

  なかなか自分最低……

  ザ・ビッチ




衝動だった。



体が動いていた。

五十メートル走に情熱を注がずにいつもタラタラ走る癖に、足が勝手に未来へ動いていた




廊下を歩く二人の腕を掴む。

万引きGメンが常習犯を捕らえる並に、力強く必死でひきとめた。





そして叫んでいた。

悪ノリした中学生男子が駅のホームで絶叫するかの如く、お腹の底から声を出した。




「わたし!! 好きな人できたみたい!」





聞かれてもいないのに武勇伝を披露する痛い男子のように、

天然アピールする為に不思議ちゃんエピソードを語るしたたか女子のように、

何も前フリがないのに、結衣は独りよがりに言っていた。



周りに聞こえないように、しかしハッキリと。

唇が動いていた。

それはそれは人生で一番の笑顔になるものかもしれない最高な輝きを浮かべ、

にっこりと愛の唄を歌えた。


「多分わたし近藤がすき」



小さく囁く子守唄を、自信満々に背筋を伸ばし宣言した。


誰も訪ねていないのに、フライングで恋心という表札のついた玄関扉をオープンにした。

そう、片思いは人を気分屋でトンチンカンな迷惑ガールにさせてしまう。