揺らぐ幻影

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中心が弛んだネット、頭より高い棒、

北と南のコートをネット中心に折ればだいたい重なる配置についた生徒。


十一月から続いた体育の授業内容は、バスケからバレーボールに移った。

運動が苦手な結衣はどちらにも興味がないのだけれど、ずっと一緒は飽きるため少し楽しみだった。


緩やかに持ち上がったボールは真ん丸に似合わない勢いで境目を越える。

それは瞬きをする間の出来事で――


「きゃっ」

「どんまいー」
「大丈夫大丈夫ー」

短く叫んだ結衣は腰から上体を反らし、きつく目を閉じて構えのポーズのまま硬直していて、

しばらくして振り返れば、球体は床に転がっていた。


アタックに成す術がなかったため、ごめんとチームメートに謝罪をする。

向かいのコートにいる敵は、ぐっぱらで別れたE組の片割れ女子たちだ。


剛速球に「やっ」と叫んだ結衣に、「気にすんな結衣」「次頑張れー」と励ましがかかり、

体育館全体に向けぺこぺこと本日四回目の謝罪をする。


「ぎゃあ!」という結衣の悲鳴の後に、「構えて結衣ちゃーん」「次いける」と仲間の声援が被せられた。

「ほんっとごめん、頑張る」

五回目の謝罪は一回目と質は変わらないのだけれど、受け手からすれば三割減のゴメンという音だろう。


それはありがとうにも言えることで、

例えばスナック菓子を友人に『食べていいよ』と勧めるよくあるシーン。

最初の『いただきます』も三回目の『貰うね』は一緒なのだが、

五回も六回もいちいち『ありがと』とか『食べるね』とか報告されたら、

非常に感謝が欝陶しく感じるし、黙って食べてくれと腹さえ立つ。


ごめんもそのような類いだからだろうか。

結衣の悲鳴に対するフォローは少し変化してきた。

「ゆーい」
「田上ちゃーん」
「結衣」

名前だけのシンプルな仲間内からの激励。


床に靴を貼付けたままの女子メンバーからすれば、つまらないのだろう。

そう、ボールと共鳴する少女がいる側から、勢いの良いボールがネットを越えることはない。

第一試合は盛り上がるはずなのだけれど、だんだんと白けた空気。

果たしてどういう訳なのか――