結局、自分のことしか考えることができない。
友人に秘密を教えられないことは、少なからず疑う気持ちがあるということ、
それ以外に理由があると言うのだろうか。
本来、大切な子にこそ秘密を打ち明けるものなのに、それが怖くてたまらないなど、実におかしな話だ。
そんな醜い自分を新たに知り、結衣は溜め息をついた。
恋をすると新しい自分になると、よく聞く。
それはきっとキラキラしてふわふわして、甘くて素敵な変化なのだろうと想像していた。
それこそポッケに蜂蜜を忍ばせているようなメルヘン具合だと妄想していたのだけれど、
結衣の場合、醜くて狡い自分を知るばかりで、ドキドキとズキズキの二つの感情――
さしあたり、今彼女がポッケに隠しているのは毒薬だろう。
席を立つ者や、教室に戻ってくるグループ、次の授業の宿題の存在を思い出し焦る二人組、
動きがあるざわついた雰囲気が、もうすぐお昼休みが終わると告げる。
快・不快の思考に翻弄されていた結衣なので、お弁当は半分も残したままだったけれど蓋をした。
黄色い鳥のキャラクター、油性ペンで青に塗ってしまえば幸せになれるのだろうか。
こんな風に嫌なものにも簡単に蓋をしてしまえたらいいのだが、人生そう甘くない。
悩みは終了しないのだから、悲しいくらい何も変わらないため、
見て見ぬふりをすればするほど、悩みの重さが増すばかりだ。
トイレに行くと言う里緒菜、職員室に行くと言う愛美を見送り、結衣は一人机に伏せた。
ちなみに、女子高生は団体行動が好きだと先入観を持たれがちだが、
彼女たちのグループは変わっていて、バラバラ行動も平気だ。
逆に『一人になりたくない』と、利用する為にベタベタ依存しあう無意味な感じがどうも苦手なよう。
――女友達。
女子高生にとって一番の理解者だとされる設定なのに、
なぜ素直に好きな人ができたと自分は言えないのだろうか。
王道のシナリオをなぞれば、今はきっと親友によるアツイ絆を演じているはずだろうに、
普通の人生はそんな都合よく友情なんて育めるモンじゃない。それは凄く非現実的な話だ。
普通な人のキャラ設定を自覚している結衣は、三十回目のため息をしつこく零した。



